IoT通信のソラコム、KDDIと格安5Gサービス

KDDI子会社のソラコム(東京・世田谷)は14日、IoT機器向けに高速通信規格「5G」に対応した通信サービスを始めると発表した。利用料金は4G並みとする計画で、大量のセンサーなどを通じて一段と多くの機器を接続できる。工場や農業設備の遠隔操作など、幅広い分野で5Gの裾野を広げていく。
KDDIの5G回線を使い、2020年度中に始める計画だ。データ容量にもよるが、利用料金は現行の4Gと同水準の月額数百円からとなる見通し。通信の遅れが生じない「低遅延」や4Gと比べて10倍以上の機器を接続できる「多数同時接続」など、5Gの特長を生かして運用できる。
顧客企業は自前の通信設備を持たなくても手軽に5Gネットワークを使い、工場や物流施設のセンサーで得たデータや映像をクラウド上で解析するなどの使い方ができる。1回線当たりのデータ通信量は少ないが多くの機器を接続したい企業の需要にも応えられる。
ソラコムのIoT通信は導入の容易さが特徴だ。携帯大手の回線を借りる仮想移動体通信事業者(MVNO)として、SIMカードを最少で1枚からオンライン販売する。企業はセンサーなどに取り付け、取得したデータをクラウドで管理できる。一括導入が主流だったIoTを小規模でも可能にして、国内IoTサービスの価格動向に大きな影響を与えている。
14日に開いたオンラインイベントでソラコムの玉川憲社長は「IoTの敷居をさらに下げ、企業のデジタル化を後押ししたい」と意気込みを語った。玉川氏と対談したKDDIの高橋誠社長は「5Gエリアを全国に広げ、IoTサービスに付加価値を提供したい」と述べた。KDDIはソラコムと組み、中小や地方などのニッチな需要も取り込んでいく狙いだ。
ソラコムの5Gサービスが成功するかどうかは活用方法の提案がカギを握る。同社のSIMは1枚単位で購入できるため低予算でも試験的に導入しやすい。今後は利用者の声も集め、活用事例をユーザー同士で共有していく考えだ。「本命」コンテンツ発掘が課題となっている5Gで、新しいビジネスの種の発見につながる可能性もある。
(駿河翼)