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考える力 子から地域へ 安藤忠雄さん

関西のミカタ 建築家

■安藤忠雄氏(78)は日本から世界に羽ばたいた建築家の一人だ。海外で多くの建築作品を手がけながらも、生まれ育った地元・大阪に公共建築を寄贈し街に彩りをもたらす。大阪市中心部の中之島には今月、子ども向け図書館「こども本の森 中之島」が開館した。

大阪の下町で育った私の家の周りには、当時あちこちに「貸本屋」があった。そこで出合った手塚治虫の「ジャングル大帝」や「鉄腕アトム」を読み、本の中に夢の世界を見つけたものだ。あの頃に味わう感動や興奮は、ずっと心の中に残るもの。最近は何でもデジタル化だが、携帯端末で見る本は便利な分、心に引っかからないだろう。せめて子ども時代くらいは紙の本に触れさせたい。

大阪の子どもを、体力もあって「知的」に元気な子どもに育てるには――。吉村洋文大阪府知事や松井一郎大阪市長がそれぞれ大阪市長、大阪府知事だった5年前、こうした対話のなかで子ども向け図書館の構想が始まった。公園の中にあるのもポイントだ。外に出ても本を読めるという自由を与える。子どもたちに自由な頭で考えてほしいと思った。

■新型コロナウイルスの影響でインバウンド(訪日外国人)集客が落ち込み、経済に陰りも出た関西。災害が繰り返し起きる日本は自粛で内向きになるのではなく、考える力を養うことが大切だと指摘する。

大阪の感染者数は抑えられているというが、大阪さえよければいいのではなく、米国に多くてもだめ。アジアに多くても観光客が来られない。観光を大きなビジネスの一つとしてやってきただけに、それだけでは経済が成り立たないということがわかった。どこかで観光に依存しすぎてしまったようだ。

世界交流が途絶えたことで、食料の自給率が低く非資源国の日本の弱さが浮き彫りになった。特に日本は海と山が近い災害国家で、大雨や地震の被害は繰り返す。地球の一員としてどう生きるかを考える時がきている。

しかし、現在は経済とともに人々の意識も萎縮したままだ。このようなときだからこそ、受け身ではなく自分の頭で考え、道をひらいていく勇気が必要だ。「こども本の森 中之島」設立目的も重なる面がある。名誉館長を務める山中伸弥・京都大学教授のようなサイエンティストが育つよう、科学技術や芸術の起点を鍛えてもらう場にしたい。子どもに考える力を与え、それが家族に考える力、30人規模の組織のトップが考える力、地域が考える力と広がっていけばいい。

■昔から大阪の街づくりの一部を担ってきたのは民間企業。外出の概念そのものが改めて問われる今、街をつくる企業の底力に期待を示す。

人間は一人で生きられるほど強くない。社会とは個人があって、企業があって成り立っているのだ。大阪にはこうした社会を、官に頼らず民の力で盛り上げようという精神が古くからあった。

大阪の街は「なにわ八百八橋」とよく表現され、これまで民間企業が資金を出し合って発展してきた。たとえば大阪・門真などで設計した「さくら広場」は当時の松下電器産業(現パナソニック)が大阪市内での桜の植樹活動に賛同したのが始まり。「大阪に緑を増やし美しい街づくりをしよう」と大阪・梅田で持ちかけた緑化プロジェクト「希望の壁」には積水ハウスが参加した。大阪の経済人には「出してやろう」という遺伝子がある。

パナソニックを立ち上げた松下幸之助やサントリーの佐治敬三など、生命力のあるリーダーも、かつて大阪には多くいた。そんな生命力のある人を生まないといけない。100年後の社会を見据えて、一歩ずつでも前進していくため、次代の大阪へ、確かなバトンを渡したい。

(聞き手は川崎なつ美)

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