ドイツ、企業向け補助金突出 EU全体の4割強
コロナ下、単一市場ゆがめる恐れ

2020/7/13 18:00 (2020/7/14 5:19更新)
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欧州各国は新型コロナ対策として企業への補助金を増やしている(独政府が支援を決めたルフトハンザ航空)=ロイター

欧州各国は新型コロナ対策として企業への補助金を増やしている(独政府が支援を決めたルフトハンザ航空)=ロイター

【ブリュッセル=竹内康雄】新型コロナウイルスの感染拡大以降、欧州連合(EU)の加盟国が自国企業などに準備した補助金のうち全体の4割強をドイツが占めていることが分かった。強固な財政力に基づく突出ぶりは、欧州統合の柱である「単一市場」の競争環境をゆがめる恐れがある。

各国の補助金は中小企業への支援制度や、個人事業者向けの所得補填制度などが目立つ。旅行や海運など業種を絞った対策もある。個別企業への支援で目立つのは入国制限で需要が蒸発した航空会社だ。

EU欧州委員会の資料によると、独ルフトハンザ航空や仏エールフランス航空、TAPポルトガル航空、スカンジナビア航空などは何らかの形で各国政府の支援を受けた。自動車大手仏ルノーの名前もある。

域内で人やモノ、お金、サービスの自由な移動が認められたEUは1つの市場として発展してきた。EUはこの単一市場を守るために、加盟国の民間支援を厳しく制限し、補助金を出す場合は欧州委の承認を得るよう義務付けている。

新型コロナの感染が広がった3月半ば、欧州委は補助金ルールの大幅な緩和を決めた。経済活動がほとんど停止し、資金繰りに行き詰まった多くの企業が破綻しかねないとの声が加盟国から相次いだためだ。

欧州委によると、6日時点で、離脱後の「移行期間」中でEUルールが適用される英国を含む28カ国からの243の対策が承認された。総額は2.3兆ユーロ(約278兆円)にのぼり、EU2位のフランスの国内総生産(GDP)に匹敵する金額だ。通常は数カ月かかる審査は1~2日で承認されることがほとんどだ。

国別ではドイツが43.5%を占める。域内最大の経済大国とはいえ、19年時点でEU(英国を含む)のGDPに占める割合は2割強で、その突出ぶりは際立つ。イタリア(19%)、フランス(17.9%)が後に続く。

ドイツの巨額補助金を可能にするのは強い財政基盤だ。ドイツは2019年まで財政黒字を長年維持する一方、仏伊スペインは財政赤字を続けてきた。スペインなど一部の国から「財政の差で企業を延命させられるかどうかが決まるのはおかしい」との不満の声が出る。

補助金を得た企業が域内のシェアを伸ばす事態や、同程度の経営規模の企業でも拠点を置く国によって、延命できるかどうかが異なるといったことが想定されるためだ。

補助金政策を担当する欧州委のベステアー上級副委員長は5月、独紙に「加盟国間で異なった水準の補助金は域内の競争環境をゆがめるリスクがある」と懸念を示した。

欧州大学院大学(カレッジ・オブ・ヨーロッパ)のマッシモ・メローラ教授はコロナ禍でのルール緩和に理解を示す一方「公平な競争を犠牲にした結果、強い経済国に基盤を置く企業にメリットが大きくなった」と分析する。

単一市場は欧州統合で達成した最も重要な成果の一つだ。4.5億の人口を抱える市場は公平な競争環境の確保に努めることで域内取引を活発にし、域外からの投資を増やした。EUはいま、単一市場を守れるかの岐路にある。

欧州委の予測では、20年の成長率はドイツなど北部欧州に比べて南欧の落ち込みが大きい。ドイツは新型コロナの影響が比較的小さかった面はあるものの、巨額の補助金が景気全体を支えている可能性も指摘される。

EUが目下議論している経済復興のための7500億ユーロ規模の復興基金案は、被害の大きい南欧支援の意味合いが強い。競争条件のゆがみへの不満を和らげる狙いもある。

ミシェルEU大統領は10日、返済不要の補助金の規模など骨格を維持したうえで、財政規律を重視して反対に回った国々の負担を軽減する案を公表した。17~18日の首脳会議で復興基金の合意を目指している。

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