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グロース株の活況はなぜ? 鍵は「非財務シフト」

広木隆のザ・相場道

コロナ禍に揺れた2020年の上半期相場が終わった。歴史に残る大波乱の相場だったが、世界の株式市場はほぼ大底を付け、戻り相場の中にあると言える。もちろん、その回復度合いはまちまちだ。全体的に、コロナ禍の被害が深刻だった国ほど相場の戻りは鈍い。

昨年末から6月末までの、主要株価指数の騰落率を見てみよう。コロナ禍の第2波が直撃する米国では、ダウ工業株30種平均株価が10%近い下落率となった。コロナ禍の死者が多い欧州諸国も軒並み2ケタのマイナスとなっている。

逆に被害が小さいアジア諸国の株価指数は堅調だ。日経平均株価は約5%のマイナス。中国の上海総合指数や韓国総合株価指数の下落率も5%以下と小さい。コロナ禍の被害が小さい分、投資家の経済回復期待が強い面もありそうだ。

世界の新興市場が軒並み高の理由は

ただ、これはあくまで大型株中心の株価指数の話だ。新興企業の株価指数は、コロナ禍の被害状況と無関係に上昇を続けている。

典型が米ナスダック総合株価指数だ。ナスダック指数はコロナショックによる下落分を全て埋め戻すどころか、その後も上昇を続け1万の大台を突破。史上最高値となったナスダックの上半期のリターンはプラス12%と、主要株価指数の中で群を抜く。

アジアの新興市場もそれに匹敵するパフォーマンスを見せている。6月末時点の昨年末比上昇率は、中国の深圳総合が15%、韓国コスダック指数が10%。そして日本の東証マザーズ指数も13%と好調だ。

なぜ新興企業がこれほど買われているのか。もちろんコロナ禍の影響は小さくはない。リモートワークの進展など人々の生活様式が変われば、新興企業が手掛けるハイテク技術には必然的に注目が集まる。新型コロナウイルスへの対応から、バイオベンチャーが買われやすくなるのも自明だ。

ナスダック指数の採用銘柄で言えば、ビデオ会議システムを手掛ける米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズがその代表格だろう。同社株は年初から4倍近い上昇率となっている。日本ではアンジェスが人気化した。同社は新型コロナのワクチン開発を進めており、個人投資家の注目を集めた。

ただ、これらの上昇はあくまでコロナ禍を受けた特需によるものだ。指数の中身をつぶさに見ると、新興企業株の上昇が単なる特需によるものでないことが分かる。

ナスダック指数を見ると、この半年に上がった指数採用銘柄の多くは、過去10年間で見た上昇率でも上位に入っている。つまり、もともと成長株として評価されてきた株が、コロナ禍でさらにその注目度合いを高めたと言えるのだ。

今や割安株投資は機能不全に陥った

なぜグロース(成長)株に脚光が当たっているのか。それはバリュー(割安)株投資が機能しなくなったことの裏返しではないか。

割安指標として、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などが使われる。しかし、コロナ禍を受けて業績見通しの開示を見送る企業が続出した。アナリストが予想しようにもそのベースとなる経済の見通しが不透明極まりない。端的に言って企業業績の予想が当てにならないなら、株価が割安かどうかを判断できない。

半面、グロース株投資では、PERなどの尺度よりも成長のための「エクイティストーリー」が重視される。事業は世の中の役に立ち必要とされるのか、製品・サービスの競争力はどうか──。業績だけでなく企業理念も含め、長期的に成長するための「ストーリー」が総合的に判断されるのだ。

昨今の株式市場では企業価値を財務指標で説明できる割合が低下し、非財務情報の重要性が増している。非財務情報とは、例えばブランド価値や人的資本のことだ。こうした情報は貸借対照表の数字からは見えてこない。ESG(環境・社会・企業統治)が重視されるようになったのもこの一環だ。

コロナ禍で業績予想の不確実性が一段と高まったことで、投資家は四半期や単年度の業績に過度に反応するショートターミズム(短期主義)から解き放たれ、より長期かつ根本的な評価に軸足を移したのではないか。その結果、グロース株選好が強まったと思われる。まだ一度も通年で黒字になったことのない米テスラの時価総額がトヨタ自動車の時価総額を上回ったことが、それを雄弁に物語る。

今年後半の日経平均予想
2万1500~2万4500円
【ここに注目】
経済回復と業績改善を織り込みながら上昇するのがメインシナリオ。コロナ禍第2波などに注意。
広木 隆(ひろき・たかし)
国内外の運用機関でファンドマネジャーなどを歴任。株式・為替からマクロ経済まで幅広い知見を基に自らヘッジファンドも立ち上げた。2010年からマネックス証券で顧客向けに情報を発信。バイサイド時代の経験から斬る相場分析や展望に定評がある。青山学院大学大学院(MBA)非常勤講師。

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