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WTOどう再建? 次期事務局長選の立候補者に聞く

米中貿易摩擦などを背景に機能不全に陥っている世界貿易機関(WTO)の次期事務局長選は8人が立候補する混戦だ。有力候補とされるナイジェリアのヌゴジ・オコンジョイウェアラ元財務相とメキシコのヘスス・セアデ外務次官が日本経済新聞のオンライン取材に応じた。両氏とも、現在は停止している紛争解決手続きの再開に注力する意向を示し、多国間の枠組みの重要性を主張した。

 ナイジェリアのオコンジョイウェアラ元財務相 「加盟国の信頼取り戻す」

――WTOの存在意義が問われています。

「国の間で信頼がなくなってしまったことが現在の状況につながった。紛争処理制度はまひ状態に陥り、多国間の貿易制度そのものを弱体化させている。独立性を持ち、定められた役割に基づいて機能することに加盟国が信頼を持てなければいけない」

――新型コロナウイルスはWTOにどう影響を及ぼしますか。

「新型コロナの感染拡大で改めて多国間主義は必要だということが分かった。誰かが安全でないなら、皆が安全ではない。全ての人や国に薬やワクチンが行き届くような貿易制度が必要だ」

――米中が対立し、単独主義が広がっています。

「分断が起きているのは制度への信頼が損なわれているからだ。米中だけではない。先進国と発展途上国の間でも分断は起きている。一歩引けば共通する利益を見いだせる。共通点がどんなに小さくても、それを発見するのが事務局長の役割だと考えている。エネルギーがあり、諦めずに中立的な立場で耳を傾ける人物が必要だ」

――どのような改革が必要ですか。

「21世紀に合うルールブックに改めるには、いま直面している課題に対応する必要がある。電子商取引(EC)やデジタル経済、気候変動、グリーン経済、循環型経済など課題が山積している」

「WTOは安定性や予測可能性、透明性、貿易の平等性といった原則を基に創設された。対立している国々にはこの枠組みが何十年にもわたる繁栄につながり、何億もの人が貧困から脱出したことを想起する必要がある」

――日韓の貿易問題をどうみていますか。

「特定の問題についてはコメントできないが、まずは紛争処理制度の機能回復に向けて即座に動くことが重要だ。どんな国の間でも起きうる紛争を解決できるようにしなければいけない」

――エジプトの立候補者がアフリカ連合(AU)の公認候補だと主張しています。

「AUの公認候補はおらず、その主張は事実ではない。私は多くの支持を受けている。西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)もこのほど私への賛同を表明した」

(聞き手はニューヨーク=吉田圭織)

ヌゴジ・オコンジョイウェアラ氏 米ハーバード大学卒、米マサチューセッツ工科大学(MIT)博士。ナイジェリア財務大臣、外務大臣、世界銀行でも要職を務めた。66歳。

メキシコのヘスス・セアデ外務次官「米中協力促す」

――候補者としての強みをどう考えていますか。

「私も創設に関与したWTOという重要な組織は大きな修正が必要になっている。私はその修正に貢献できると考えて立候補した。国際通貨基金(IMF)などでの勤務を通じ、債務危機問題で先進国とも、発展途上国とも交渉してきた。首脳や閣僚とも渡り合ったトップレベルの交渉者だと自負しており、その経験を生かしたい」

――通商の現状をどうみていますか。

「非常に深刻だ。米中貿易摩擦に加え、新型コロナウイルス感染拡大の問題もある。米中両国はWTOを立て直すのに協力すべきではないか。両国の関与なしでは何もおこらない。議論の場を持たなくてはならない」

――WTOの優先課題は何でしょうか。

「重要業務の紛争処理機能の停止が問題で、修正する必要がある。米国はWTO協定に反対しているのではなく、紛争処理の実務や適用を問題視し(紛争処理の『最終審』に相当する)上級委員会の委員選任に反対している。他国はこれに批判的だ。強い事務局長として、信頼回復に努める」

――欧州連合(EU)や中国は暫定的な上訴制度の設置を目指しています。

「一時的ではなく、恒久的な機能の回復を目指したい」

――アフリカや女性の候補、閣僚経験者が有利との声があります。

「(地域)持ち回りの議論にはくみしない。過去には欧州からの事務局長が続いた。重要なのはWTOを危機から救い出す力だ。何が課題かを知っていて加盟国の議論に関与することが大事ではないか」

――米中に支持は求めていますか。

「米中とはすでに議論をした。両国が結論を出すのは先だろうから、支持は求めていない。主要国の一角である日本とメキシコは良好な関係を築いており、日本の支持をお願いしたい」

――米国は世界保健機関(WHO)からの脱退を通告しました。WTOからの脱退もあり得ますか。

「そのようなことはおこらない。政財界の大半はWTOを支持している。新型コロナからの経済回復に際してもWTOは通商ルール作りで重要な役割を果たせる」

(聞き手はメキシコシティ=宮本英威)

 ヘスス・セアデ氏 メキシコ国立自治大化学卒、英オックスフォード大経済学博士。WTO事務局次長、IMF上級顧問、香港中文大学深圳校副学長などを経験した。18年12月から外務次官(北米担当)として北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を担当してきた。73歳。

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