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ウィザーズ八村「自分が軸に」 主力離脱で好機到来

スポーツライター 杉浦大介

「こんなことは言いたくないが、あなたのチームに他に誰がいるのか私は知らないんだ。だから(注目選手を)2人教えて欲しい!」

7月9日、米ケーブル局TNTで放送されたNBA(全米バスケットボール協会)の情報番組に出演した際、同リーグの元スーパースター、チャールズ・バークリーはそう述べた。

ワシントン・ウィザーズのスコット・ブルックス・ヘッドコーチ(HC)から「ジョン・ウォール、ブラッドリー・ビール以外、誰か知っているのか?」と問われた際、バークリーは冗談まじりにそう言い放ったのだった。こんなやりとりは、ウィザーズでの1年目に平均13.4得点をマークしてきた八村塁もまだ全国区の存在ではないことを物語っているのだろう。

筋トレで体重は約5キロ増

しかし、7月30日から予定されるシーズン再開後、八村の知名度は大きく跳ね上がるのかもしれない。ウィザーズのスーパースター、ウォールとビールは故障で開催地のフロリダ州オーランドには同行しないことが決定。また、今季はビールに次ぐチーム2位の平均15.4得点を挙げていた好シューターのダビス・ベルタンスも欠場を表明している。さらにトーマス・ブライアント、ゲイリー・ペイトン2世といった主力選手は新型コロナウイルスで陽性反応を示しており、いつ復帰できるのかがはっきりしていない。こんな状況下で、八村にはこれまで以上に大きな負担がかかるはずだ。

「(軸になることを)僕も意識してやっています。得点だけじゃなくて、積極的にプレーメイクもどんどんしていきたいなと思います」

7月11日、すでにオーランド入りした八村は、練習後のズーム会見でこう述べた。「ゴンザガ大、日本代表チームでも自分が軸にならなければいけなかったから」と話していた通り、八村はこれまでキャリアの様々な段階でエース的な役割をこなしてきた。世界最高リーグ、NBAでも同じことができるのか。22歳という伸び盛りの年齢で、しかも3月以降に集中して行った筋力トレーニングで約10ポンド(約4.5キロ)も体重を増やしたという成長株が、再開後に主軸としての重責をどれだけ果たしてくれるかが楽しみだ。

具体的に、特に注目されるのは八村の3ポイント(3P)シュートがどれだけ向上しているかだろう。中断前まで3Pの成功率は27.4%に終わっており、ロングジャンパーの精度は八村の弱点だと認識されてきた。

鍵は3ポイントシュート

「八村が中間距離のジャンプシュートに自信を持っているのは理解している。ただ、現代のNBAではやはり3Pを打つ能力は必須だ。今後、マークが厳しくなる中で、自身、そしてチーム全体にスペースを開くためにも、八村はやはり3Pの精度を上げていかなければならない」

八村は中断中、ロングジャンパーの練習を繰り返した=共同

今季中、某NBAチームのスカウトがそう述べていたことがあった。八村自身ももちろんこの点は意識しており、今季を通じて試合前の時間などには丹念にロングジャンパーの練習を繰り返していた。3月途中にコロナでシーズンが中断して以降も努力を続け、「(3Pも)自信がついてきている」と話している。

「繰り返し、練習が必要だ。時間がかかるかもしれない。試合では自信を持って打たなければいけない。決まらない時も耐えなければいけない。コーチ陣は"どんどん打て"と勧めながら見守っていく。チームは彼の3Pを必要としている。塁は中間距離では素晴らしいシューターで、すでにフォームは良い。ちょっとした微調整で優秀な3Pシューターになれると思う」

ブルックスHCのそんな言葉通り、本人だけではなく、周囲の我慢も鍵になるだろう。より大きな弧を描く滞空時間の長いシュートを重点的に練習しているというが、今夏もすぐに高確率で決まり始めるとは限らない。当初は苦しんでも諦めず、打ち続けなければ向上はあり得ない。

プレッシャーはかからない状況

米プロバスケNBAの再開を前に、集中開催地のフロリダ州でオンライン取材に応じるウィザーズの八村=共同

幸いなのは、シーズン再開後、勝利への重圧はそれほど大きくはないであろうことだ。現在、イースタン・カンファレンス9位のウィザーズにもプレーオフ進出のチャンスはあり、八村も「8試合をしっかり戦いたい」と話していた。ただ、多くの主力が欠けている今回のメンバーで、上位進出が果たせなくてもファンを失望させることはない。得点源として期待される八村としても、失敗を恐れずに思いきってシュートを打ち続けられる状況のはずである。

オーランドに集まってくる強豪チームを相手に、日本が生んだ俊才は将来を楽しみにさせるだけの成長度を誇示できるか。たとえ短い滞在に終わろうと、将来に向けて大切な時間なのは間違いない。ここでフレッシュな魅力をアピールすれば、バークリーをはじめとするリーグのご意見番たちも、もう"ルイ・ハチムラ"の名前を決して忘れられなくなるはずである。

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