コロナで「共助」試練 ボランティア県民限定

熊本
2020/7/11 17:02 (2020/7/11 21:05更新)
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流れ込んだ泥を片付けるボランティア(11日、大分県日田市)=共同

流れ込んだ泥を片付けるボランティア(11日、大分県日田市)=共同

多くの災害を経験し社会に定着した災害ボランティアの「共助」が新型コロナウイルスの感染拡大で揺らいでいる。今回の記録的豪雨に見舞われた被災地では、感染拡大を警戒して各自治体が県内居住者などにボランティアの対象を限定する動きが出ている。

大雨で飛騨川が氾濫し浸水被害が相次いだ岐阜県下呂市は感染リスクに配慮してボランティアの対象を市民に限定した。市の社会福祉協議会(社協)の担当者は「人手が足りないと住民から聞いているが、感染対策をする余裕がない」と話す。

同協議会によると、雨の被害があった8日以降、片付け作業を手伝いたいという問い合わせが県内外から多く寄せられた。だが感染防止対策の徹底は難しいと判断し、市外からの受け入れを断念した。担当者は「ボランティアの申し出は本当にうれしいのでお断りするのは心苦しいが、みんなの安全のために理解してほしい」と話す。

「まずは体温を測ってもらいます」。約280棟が床上浸水し、14棟が全壊した熊本県芦北町のボランティアセンターで9日、スタッフが集まった男女約15人に声をかけた。一人ひとりの体調を確認し、非接触型の体温計で検温。マスクや消毒液を配って活動現場に送り出した。

同センターを運営する町社協は感染拡大を防ぐため、募集を県内居住者に限定。2週間以内に県外への移動歴がある場合も対象外とした。現地の受付窓口で人が密集しないよう、申し込みも事前にファクスや電話で行う形式を取った。

両親が営む呉服店兼住宅が水につかり、片付けに訪れた男性(39)は「人手は足りないが、感染が広がったらアウト。県内に限定するのは仕方がない」。町社協の担当者は「新型コロナさえなければ大勢の人に現場に入ってもらいたいが、今回はそれができず、バランスが難しい」とこぼす。

浸水被害を受けた民家の片付けをする県内在住のボランティアや近隣住民(9日、熊本県芦北町)

浸水被害を受けた民家の片付けをする県内在住のボランティアや近隣住民(9日、熊本県芦北町)

被災自治体の中には高齢化率の高い自治体も少なくなく、高齢者への感染リスクを考慮しなければならない。約3700棟が浸水した熊本県人吉市の高齢化率は約36%、約120棟が浸水した同県錦町の高齢化率は約33%で、県の平均(約30%)よりも高い。

人吉市は募集対象を県内居住者に限り、錦町は町内居住者に絞った。錦町では水没した家具の運び出しなど力仕事の要請が多いが、10日朝までにボランティア参加の意思を示したのは11人で50~60代が中心だった。

町内に感染者は出ていないが、重症化しやすい高齢者への感染リスクは無視できない。社協の担当者は「感染リスクを抑えるためにも、当面は外部から受け入れず、町内の人手でやりくりしていきたい」と話した。

災害時は行政による公助に加え、自助やともに助け合う共助が必要だ。過去の大規模災害では全国からボランティアが駆けつけ、復興の一翼を担ってきた。1995年の阪神大震災では1年間で延べ137万人が活動した。被災地支援の意識が一気に高まり、同年は「ボランティア元年」と呼ばれる。

全国社会福祉協議会(東京)によると、2011年の東日本大震災ではボランティアセンターを通じて延べ154万人、18年の西日本豪雨では同26万人がそれぞれ活動し、復興を下支えした。全社協の担当者は「ボランティアは被災地になくてはならない存在」と語るが、今回の豪雨ではホームページで「被災地の状況や情報をよく確認のうえ参加するように」と慎重な対応を求めた。

熊本県は人手を確保する方法を模索中。県健康福祉政策課は「人集めは熊本地震のときよりも厳しい。新型コロナで夏休みが短縮され、学生も参加しづらいだろう」とみている。仮に県外ボランティアを受け入れるとしても「参加者が増えれば活動前の検温に時間がかかり、ボランティアセンターなどの拠点で『3密』(密閉、密集、密接)が起きるリスクも高まる」(県社協担当者)。

新型コロナの治療法が確立していない現状では、災害時には全国どこの自治体でも同様の事態が起きる可能性がある。

兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科の室崎益輝科長(防災計画)は「人手が確保できずに復興が遅れれば、被災者の負担が大きくなり、震災関連死にもつながりかねない。十分なボランティアを集められない場合、自治体は自衛隊や消防、民間企業の協力を得るなど必要なマンパワーの確保を急ぐべきだ」と強調する。

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