3歳女児放置死、兆候生かせず 専門家「検証必要」

社会・くらし
2020/7/11 12:48
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東京都大田区で女児(3)が自宅に放置され死亡した事件では、乳幼児健診に来ないなど育児放棄(ネグレクト)を疑わせる兆候があったが、行政などは事件の未然防止に生かせなかった。専門家は「関係機関の連携が十分だったのか検証すべきだ」と指摘する。

「娘が息をしていない」。事件は6月13日、母親の梯(かけはし)沙希容疑者(24)の通報で発覚した。梯容疑者は同月5日から8日間、稀華(のあ)ちゃんを自宅に残し、交際相手がいた鹿児島県へ旅行した。稀華ちゃんはマットレスに横たわった状態で発見され、司法解剖の結果、死因は高度脱水症状と飢餓だった。

捜査で異常な育児の状況が明らかになる。稀華ちゃんは保育所を約1年前に退所して以降は日中も自宅にいた。捜査関係者によると、梯容疑者は5月にも3日間、1人で鹿児島を訪問。稀華ちゃんを自宅に残し、パチンコや飲み会で夜遅くまで出歩いていた。

防犯カメラ映像から稀華ちゃんの外出が最後に確認されたのは、事件から1カ月余り前の5月初旬だった。稀華ちゃんの発見時、部屋の出入り口にはソファが置かれ、移動できないようにされていた。捜査幹部は「軟禁に近い状態だったのではないか」とみる。

ただ近隣住民は異変に気付かなかった。梯容疑者と同じマンションに住む60代女性は「半年前、ベビーカーに子供を乗せているのを見たが、変わった様子はなかった」。同じ階の男性は「子供がいたことも知らなかった」と話す。警察や児童相談所への相談や通報も無かったという。

警察が「虐待の兆候の可能性がある」(幹部)とみているのが乳幼児健診の欠席だ。乳幼児健診は母子保健法で受診が義務付けられているが、稀華ちゃんは1歳半の受診が最後で、2019年12月の3歳児健診を受けなかった。20年1月の予備日も来なかった。

大田区の担当職員は5月11日、受診を求めるため梯容疑者の自宅を訪れた。しかしインターホンには応答がなく、電話しても連絡が取れなかったという。区の担当者は「対応に問題があったか、現時点ではコメントできない」と話した。

19年に全国の警察がネグレクトなど「怠慢・拒否」の疑いで児相に通告した子供は8958人。統計を始めた06年(476人)の18倍に上り、増加傾向にある。

虐待防止に取り組むNPO法人「チャイルドファーストジャパン」の山田不二子理事長は「幼児と2人暮らしなのに保育所をやめたり、乳幼児健診を欠席したりしたのは虐待をうかがわせる重要なサインだった。事件を防げた可能性はなかったか、行政や警察、児相などの対応や連携体制を検証する必要がある」と話した。

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