在宅フィットネスや契約書署名、新型コロナが促すM&A

2020/7/11 5:57 (2020/7/11 6:22更新)
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カナダのルルレモン・アスレティカは自宅でフィットネスの指導を受けられる製品・サービスを提供している米ミラーを買収する

カナダのルルレモン・アスレティカは自宅でフィットネスの指導を受けられる製品・サービスを提供している米ミラーを買収する

【シリコンバレー=奥平和行】新型コロナウイルスの感染が広がるなか、米国やカナダの企業が相次ぎM&A(合併・買収)に乗り出している。新たな生活様式や働き方に応じて成長分野を強化するためだ。在宅フィットネスや社員のコミュニケーション改善といった分野が注目を浴びる。起業や新興企業の資金調達に影響を与える可能性もある。

「デジタル技術を活用したフィットネス関連サービスは以前から伸びていたが、新型コロナで普及が加速した」。カナダのスポーツ衣料品メーカー、ルルレモン・アスレティカのカルビン・マクドナルド最高経営責任者(CEO)は強調する。同社は7月半ばをメドにフィットネス機器・サービスを提供する米ミラーを5億ドル(約540億円)で買収する。

2016年発足の同社は鏡状のディスプレーを販売し、自宅でフィットネスの指導を受けられるサービスを提供している。画面にはインストラクターなどを映すほか、鏡状のため自分の姿も確認できる。20年の売上高は1億ドルまで拡大する見込みで、ルルレモンは本業のヨガなどに使う衣料品の販売との相乗効果を見込む。

新型コロナの流行により外出が制約を受け、日用品や料理の宅配サービスの利用も増えた。ライドシェア(相乗り)大手の米ウーバーテクノロジーズは今月6日、料理宅配サービスの米ポストメイツを26億5000万ドルで買収すると発表した。成長分野で足場を固め、ライドシェアの落ち込みを補う。

米スラック・テクノロジーズが狙うのは社員のコミュニケーションの改善だ。在宅勤務が広がり、「顧客企業や当社の社員は社内の人とつながるのに苦心している」(同社)。インターネットを通じた社員情報管理・検索サービスを提供している米ライメトを傘下に収め、同社の技術をビジネスチャットサービスに取り込む。

16年に発足したライメトは企業が社員一覧を作成するのを支援するサービスを提供し、利用企業の社員はほかの社員の名前や連絡先、経歴、現在の担当業務などを簡単に調べられるのが特徴だ。出社しなくてもほかの社員とのつながりを築いたり維持したりしやすくすることで在宅勤務の広がりを支える。

電子署名サービスを提供する米ドキュサインは7日、ビデオ会議システムを使って公証人の立ち会いが必要な契約書を作成できる仕組みを提供している米ライブオーク・テクノロジーズを3800万ドルで買収することを決めた。ライブオークの技術を取り込み、ネット経由で重要な契約を結べるようにするサービスを今夏にも始める。

各社が事業の強化に向けて買収しているのは設立から10年未満のスタートアップ企業が大半だ。生活や仕事におけるデジタル技術の活用の広がりに対応するため大手企業が関連技術をM&Aで取り込む動きは以前からあったが、新型コロナの流行により事業の前提が大きく変わった。各社はニューノーマル(新常態)にも同様の手法で対応しようとしている。

M&Aが活発になることによりこうした分野での起業が盛んになり、ベンチャーキャピタル(VC)などの投資が増える可能性がある。米エバーノートのCEOなどを務めたフィル・リービン氏が設立した米オール・タートルズは7日、ビデオ会議の画面にプレゼンテーションの画面を組むといった使い方を可能にする新サービス「ンーフー」の試験提供を始めた。

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