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結婚式、送別会… 年間臨時支出は予算化して別途確保

Dr.マネーお悩み外来 Vol.6

本日もお金の悩みを抱えた人が、白鳥FP事務所ZOOM相談にやってきました。「自分のお金は自分で管理運用できるように、一生困らないマネーリテラシーを身につける」をモットーに、FP白鳥京香が皆様のご相談にお答えします。

Case2-3: 貯蓄ができないと悩んでいる食品メーカーにお勤めのBさん(28歳、女性、都内に一人暮らし、年収約510万円、手取り年収約390万円、預金は40万円)の3度目のオンライン相談です。前回は老後資金をためるために必要は「貯蓄率」を計算する方法をお教えしました。
 前回の処方箋は、
・自分の「必要貯蓄率」を求めることが大切
・必要貯蓄率は長期的な視点で考える
でした。

白鳥 Bさんの「必要貯蓄率(S)」は約27%でした。でも、守れそうもないということですね。

Bさん はい、無理です。

白鳥 わかりました。必要な貯蓄率がわかっても、実行できなければ意味がありません。では、実行できる貯蓄率を求めてみましょう。Bさんのように必要貯蓄率が高すぎるという人は「(2)老後生活費率(X)」を下げてみてください。将来、ライフプランが変わる可能性は大いにありますし、「スモールステップで確実に」です。

Bさんの場合は、前回「X=90%」で計算しましたが、ぐんと下げて60%にしてみましょう。すると、必要貯蓄率は約14%に下がりました。想定する老後生活費は約21万円です。

老後生活費を求めるには、まず、現役時代にためられる金額を求めます。

(1)今後の平均の手取り年収(Y)×必要貯蓄率(S)×(5)現役年数(a)

これを「(6)老後年数(b)」で割ったものが「1年間に取り崩せる金額」です。これに「(3)年金手取り額(P)」を足すと老後の年間生活費が出るので、12で割れば月額老後生活費が求められます。

老後生活費をみて、「(2)老後生活費率(X)」を上げ下げしてみてださい。今の生活費をベースにするとイメージしやすいと思います。

ご参考までに、総務省の家計調査で高齢夫婦の生活費の平均は24万円、単身世帯は14万円ということです(2019年)。

Bさん 14%か……。もう少し下げたい気もしますが、これまでの分を取り戻したいので頑張ります。

白鳥 すばらしい! 必要貯蓄率は、働く期間を延ばす、つまり「(5)現役年数(a)」を延ばして「(6)老後年数(b)」を短くすることでも下げられます。今後、働き方が変わったときや大きな収入や支出があったとき、結婚したり子供をもったりしたときなどには、新しい「必要貯蓄率(S)」を計算し直してください。

では、Bさんが実際にいくらためなくてはならないのかを計算します。現在の手取り年収390万円に必要貯蓄率をかけると現在の必要貯蓄額がでます。390万円×14%で、年間必要貯蓄額は約55万円です。今後、収入が上がれば必要貯蓄額は増えますし、下がれば少なくなります。

この55万円は、毎月4.6万円ずつためていってもいいし、月々は2万円ずつ、2回のボーナス時にプラス15.5万円ずつなどとしても構いません。

Bさん 私はボーナス併用貯蓄にします。

白鳥 いいネーミングですね! では、早速、夏のボーナス分から貯蓄を始めてくださいね。

さて、いよいよBさんの「お金がためられない問題」を解決していきます。1回目の面談でお聞きした10個の質問、覚えていますか? Bさんは全部「Yes」でした。

まず考えたいのは、

(2)クレジットカードで買ったことを忘れて、請求書がきて驚くことがある

(7)「今日だけ」「来月から」と、決心だけはいつも立派だ

(9)「まあいいか」となかったことにすることがよくある

この3項目です。

(2)は自分が毎月いくら使ってよいのかわかっていないためです。支払日にお金が足りない。「まあいいか」「今月だけ」と貯蓄に手を出す。結果、「ちょっとためてはすぐ取り崩す」を繰り返し、気がつけば「ああ、今年も貯蓄ができなかった」となるわけです。なのに「来月こそは」と決心し、罪悪感が薄れていく――。これは「お金がためられない人」の典型的パターンです。

Bさん ドキっ。まさしく。

白鳥 お金をためていくには、ためようという心構えと貯蓄を続けていく環境を作ることが大切です。

Bさん 私、思わぬ出費があったりして、せっかくためたお金を下ろすこともよくあります。

白鳥 思わぬ出費ってどういうものですか?

Bさん 友達の結婚式に呼ばれたり、送別会や暑気払いの飲み会が立て続けにあったり……

白鳥 なるほど。でも、それって本当に思わぬ出費でしょうか。社会人になって6年ですもの、送別会も暑気払いも結婚式も想定できますよね?

Bさん まぁ、確かに……。

白鳥 その「ためては崩す」をしないために、「毎月ではないけれど、ある程度まとまった金額になる支出」を書き出してみましょう。たとえば、帰省代や旅行費用、年払いにしている保険料、冠婚葬祭費、忘年会や歓送迎会シーズンに増える交際費などです。月別に考えるとわかりやすいですよ。あと、洋服を買うのが大好きな人はシーズンごとの予算を作っておくなど、お金をたくさん使う傾向のある項目には予算を立てるのもお勧めです。

白鳥 これらを合計したものが、「年間の臨時支出の予算」です。

Bさん なるほど。えっと、「年間の臨時支出の予算」は30万円になりました。

白鳥 はい。「手取り年収」から「必要貯蓄額」と「年間の臨時支出の予算」を差し引いたものが「1年間にあなたが自由に使えるお金」です。それを12で割れば、「あなたが使ってもいい毎月の金額」がわかります。つまり、この金額内で生活をすれば、「貯蓄」を取り崩さなくてすみますね。

手取り390万円-(必要貯蓄額55万円+年間の臨時支出の予算30万円)=305万円

Bさんの毎月自由に使えるお金は約25万4000円。

白鳥 貯蓄額は先に取り分けて、別の貯蓄口座に移しておきます。いわゆる「先取り貯蓄」です。これで、Bさんは、毎月自分がいくら使えるのかがわかりましたし、長期的な視点を持って貯蓄を続けていく環境も整いました。臨時に必要なお金は計画的にためていますので、「ちょっとためてはすぐ崩し」はなくなるはずです。先の3つの質問は、すべて「No」になりますね。

そろそろお昼休みも終わりですね。次は、いかに上手に「毎月自由に使っていいお金」でやりくりするか、残りの7つの質問についても「No」にできる方法をお話します。

きょうの処方箋をお渡ししますね。

◇  ◇  ◇

・実行できる必要貯蓄率を求めることが大切

・確実に貯蓄をするには、毎月自由に使える金額を知ること

◇  ◇  ◇

です。ではまた次回。

岩城みずほ(いわき・みずほ)
ファイナンシャルプランナー(CFP)。オフィスベネフィット代表。「金融商品を販売することによるコミッションを得ず、中立的な立場でコンサルティングする」をモットーに、NPO法人「みんなのお金のアドバイザー協会(FIWA)」副理事長も務める。著書に『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(日本経済新聞出版社)など。https://www.officebenefit.com/

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本日もお金の悩みを抱えた若者が「白鳥FP事務所」のドアをたたく……。ファイナンシャルプランナーの岩城みずほ氏がマネーリテラシーの向上のために様々なお金の問題を取り上げ、対話形式でわかりやすく解説します。隔週火曜日に掲載します。

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