危機が生む次代の「小さな巨人」たち(編集長コラム)

2020/7/10 20:00

経済危機は常に世界を変えてきました。金融システム危機、リーマン・ショック、コロナ危機――。ほぼ10年おきにやってくる危機は変化と隣り合わせで、かつ前回とは異なる姿で襲ってきます。東京都心で感染者が再び増え始め、波乱の夏が近づいています。コロナ危機の行方は、まだ誰にも見通せない不穏な情勢です。

危機が変化を生むのなら、ポートフォリオも見直す必要が出てきます。コロナ禍から抜け出せない今、平時の何倍ものスピードで、成長の軸やシナリオが変わっているのであれば、なおさらです。

ロンドン市内をデモ行進する医療スタッフ(7月3日)=ロイター

ロンドン市内をデモ行進する医療スタッフ(7月3日)=ロイター

昔話で恐縮なのですが、11年前の2009年、リーマン・ショックの傷がまだ癒えない7月、日経ヴェリタスは「『ない』と困る会社」という特集を組みました。

中国をはじめとする新興国の台頭とグローバル化、IT化が進む中で、規模は小さいけれど、半導体や機械、自動車といった製造業が製品を作るのに欠かせない「オンリーワン」の製品や技術を持つ企業、IT(情報技術)やソフト産業に欠かせない技術を持つ企業などを紹介しました。

ハーモック・ドライブ・システムズの精密減速機

ハーモック・ドライブ・システムズの精密減速機

そのうちの1社が産業用ロボットなどに使われる減速機に強いハーモニック・ドライブ・システムズでした。金属のたわみを活用した同社の小さな精密減速機が高い精度で位置決めできるとの評価から、半導体、自動車、航空・宇宙産業などで使われ始め、世界シェアを高めているところでした。当時の時価総額は約240億円前後。危機の下でも強度と精度を併せ持つ技術開発を進めた結果、経済のデジタル化の波に乗り、半導体や産業機械向けの受注が伸びていきました。直近までに時価総額は09年比で24倍(株式分割考慮後ベース)に膨らみ、5000億円企業の仲間入りをしています。

2020年3月期は、米中摩擦の影響などで顧客の設備投資が鈍り、連結最終赤字でした。今期は回復を見込んでおり、同社の大株主には、中長期の企業価値に着目する米大手運用会社キャピタル・リサーチ・アンド・マネージメントも名を連ねています。キャピタルは5月末には保有比率を引き上げたことを明らかにしました。

中長期で資産運用を目指す場合の醍醐味は、潜在力のある中堅企業を見いだし、その成長シナリオと5~10年先の世界の未来予想図を重ね合わせて、企業の持つ可能性を探る点にあると思います。

7月12日号の日経ヴェリタス巻頭特集は、コロナ危機の後の世界で羽ばたきそうな中堅企業を探る「混迷で育つ小さな巨人」です。時価総額300億円以下の中堅企業で、稼ぐ力・現金を貯める力・株主に還す力という3点に優れた企業を取材しました。

検査の準備をする医療スタッフたち(米ニューヨーク)=AP

検査の準備をする医療スタッフたち(米ニューヨーク)=AP

編集委員のリレーコラムCOMPASSでは藤田和明編集委員が「出遅れ日本」こそ、むしろ投資の好機というロンドンのファンドマネジャーの視点をもとに「ここからの日本株投資」のヒントを解説しています。経済指標の読み方のコツを解説した第2特集フォーカス面も読みごたえがあります。日経電子版でも公開しますので、週末のひとときに、ぜひお目通しください。

(日経ヴェリタス編集長 塚本奈津美)

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