神奈川・箱根、鉄道復旧も回復遠く 国内客の誘致強化
コロナ危機 地方から 神奈川の観光地(上)

2020/7/12 2:00
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老舗の富士屋ホテルは15日に改装オープンするが、訪日客の宿泊予約はゼロだという(神奈川県箱根町)

老舗の富士屋ホテルは15日に改装オープンするが、訪日客の宿泊予約はゼロだという(神奈川県箱根町)

新型コロナウイルスの感染拡大で神奈川県の観光業が試練に直面している。海外からも人気の箱根や鎌倉、訪日客誘致を強化してきた横浜は深刻な客数減に苦しむ。新型コロナ流行前のにぎわいが戻る気配はまだみえないが、知恵を絞った独自の観光振興策で観光地復興に挑んでいる。

「少しずつ観光客を迎える準備はできているのだが……」。箱根の主要観光ルート「ゴールデンコース」を結ぶ箱根登山鉄道の担当者は渋い表情で話す。同鉄道は2019年の大型台風で被害を受け、箱根湯本―強羅駅間が長期運休を余儀なくされた。23日にようやく全線再開してゴールデンコースが復活する予定だが「観光のV字回復は見込めない」。

運休区間の代行バスは1度に50人程度しか運べないが、電車は300人程度を輸送でき、地域の回遊性は大幅に向上する。箱根は15年に箱根山の火山活動が活発化して以降、大型台風などが重なり長期の苦戦を強いられてきた。地元観光業者は箱根登山鉄道の復旧を待望していたが、今度は新型コロナが猛威が振るう。

「7月の客室予約は半分くらい。着地は6割くらいになりそう」。15日に改装オープンする老舗の「富士屋ホテル」(神奈川県箱根町)の飯田慶副支配人はこう話す。同ホテルは約140年前の創業以来最大の改装を2年以上かけて実施してきた。耐震化や大浴場を整備するなどして観光客を迎える準備を進めるが、訪日客の予約はゼロだという。

箱根はバブルが崩壊した頃から企業などの団体客が減る一方、個人客と訪日客の増加で補ってきた。外国人宿泊客数は大型台風や新型コロナの影響がなかった18年に59万人と最多を更新したが、コロナで訪日客需要が蒸発。箱根温泉旅館ホテル協同組合の調査では、加盟施設の4月と5月の宿泊実績は前年同月に比べて9割も減少した。

訪日客の回復が見通せない以上、国内客に訪れてもらうしかない。箱根町は1万円相当の割引券として使える宿泊券を五千円で販売。異例の割引率で予定の1500枚は数分で完売した。7月は飲食店などで使えるクーポン券「箱いこ」を発売する。山口昇士町長は「夏の旅行先に自然豊かで開放的な気分を味わえる箱根をぜひ検討してほしい」と訴える。

首都圏を中心にテレワーク導入の動きが進むなか、仕事と休暇を組み合わせた「ワーケーション」の拠点として、箱根の利用を呼び掛ける動きも出てきた。

町職員や観光業者らで箱根の発展を目指す「箱根DMO(観光地経営組織)」は神奈川県と連携し、ワーケーションに取り組む宿泊施設を紹介する特設サイトを開設し、5施設を掲載している。

ワーケーションプランを開発した吉池旅館(神奈川県箱根町)の鈴木和男社長は「顧客に来てもらうにはライフスタイルの変化に対応しないといけない」と話す。同プランではチェックインの時間を通常の午後2時から午前11時にしたり、室料を1人分にして安くしたりして、テレワーク拠点として利用しやすいようにした。

箱根は火山、台風、新型コロナと負の要因に苦しめられてきた。町が低利の支援融資制度を緊急でつくるなどしたため目立った廃業はみられないが、旅館などの経営体力は低下している。感染が終息し、訪日客が戻ってくるまでどう乗り切るか。箱根の新たな集客策が問われている。

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