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選手と支援、二足のわらじ サッカー・中町公祐(上)

中町公祐(34)には2つの顔がある。プロサッカー選手と、サッカーと医療でアフリカを支援するNPO法人「Pass on」の代表理事の顔である。

横浜Mのオファーを断り、昨季はアフリカ南部ザンビア共和国のチームでプレー。「自分の甘さを知ったし、やる気も出た」と話す

Jリーグ・横浜Mの渋いMFで鳴らした中町が、ザンビア共和国のゼスコ・ユナイテッドに移籍したのは2019年2月。それから同国で選手と社会貢献活動の二刀流を志し、様々な困難に直面してきたが、本人は至って意気軒高だ。

今年1月の国内リーグで頬を負傷した。接触プレーで倒れた際、絡んだ相手にかかとを落とされ、肉をそがれた。タッチライン外に運ばれ、医療用ホチキスでばちんばちんと治療。後に日本で整形手術を受け直したが、ザンビアではプレー中に前歯も2本折られた。

頬の傷が癒え、チームに戻ると、まだ1年を残す契約の解除を告げられた。理由をただす間にアフリカ南部内陸の国にも新型コロナウイルスが広がり始め、国内リーグは活動を停止。サッカー選手として今はフリーの状態で、アフリカで次の移籍先を探している。

今年9月で35歳になる。普通なら帰国や引退を考えてもいい頃合い。しかし中町の来し方を振り返ると「普通」より、「人と違うことをする」という欲求が常に勝るようなのだ。

群馬県立高崎高から慶大に進学すると同時に、湘南でJリーガーになったのも異色。4年で解雇されると慶大ソッカー部に入部、卒業後に福岡でプロに返り咲いた。7年間在籍した横浜Mでは主将も務めた。その愛するクラブから18年オフに2年の契約延長の申し出を受けたのに、内容を確かめもせずに断った。

「その時はもうアフリカでやりたいことが見つかっていたので」。給料が10分の1以下に減った。

ザンビアでは先入観を覆されることの連続。週の前半は午前と午後、2時間半の2部練習が当たり前。カメルーンやナイジェリアのような破格のサイズ、パワーとスピードを誇るわけではない。それを彼らも自覚し、身体能力の差を猛練習と運動量で補うという日本に似た発想を持つ。アフリカもいろいろなのだ。

ただし、標高1000メートルを超える高地で鍛えられるからか、どんなに練習しても回復力は驚異的。丸1日を割くような長距離移動の翌日に2部練習があるのも参った。移動日は休日としてカウントされるのだ。

うれしい誤算は年齢の概念を破壊されたこと。ベテランのつもりで乗り込んだゼスコに年上の選手が6、7人いた。生計を立てる手段が限られるせいか簡単に引退せず、ザンビアでの35歳は、これから脂が乗る日本の30歳くらいの感覚。「自分の甘さを知ったし、やる気も出た。選手としての炎はまだ消えてない」。浪々の身ながら、傷ついて精悍(せいかん)さを増した顔で笑って話すのである。=敬称略

(武智幸徳)

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