フェイスブック株高にみるESG投資の限界(NY特急便)
米州総局 清水石珠実

2020/7/10 6:41
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9日の米株式市場で主要株価指数はまだら模様の値動きとなった。

ダウ工業株30種平均は、米南西部を中心に新型コロナウイルスの感染拡大懸念で大幅に下落。一方でハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数はこの日も過去最高値を更新した。大手企業による広告停止など悪材料もあるフェイスブックも、ハイテク株の一角として最高値圏での取引が続く。

黒人差別への抗議活動「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切だ)」が広がるなかで、憎悪を助長する投稿を放置してきたとしてフェイスブックへの批判が高まった。人権団体などが企業に対し、7月中のフェイスブックへの広告出稿停止を呼びかける活動を開始。アウトドア用品のパタゴニアや英蘭ユニリーバ傘下のアイスクリームブランド「ベン・アンド・ジェリーズ」などが相次ぎ参加を表明した。

さらに、米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズなど、広告停止期間を7月に限定せずに「無期限」や「年内」とする大手企業まで登場した。

ベライゾンは同社の広告がフェイスブック上で反ユダヤ的な動画の横に掲載されたとの指摘を受けて、「フェイスブックが安心して広告を出せる環境を整えるまで、我々は容赦なく対応する」(ベライゾンのチーフ・メディア・オフィサーのジョン・ニッティ氏)と厳しく批判した。

フェイスブックの収入は98%が広告だ。広告停止の動きが業績の重荷になるとみられて、6月下旬には一時株価が大幅に下がる場面もあった。だが、株価下落は長くは続かなかった。広告収入の主力は中小企業からの広告出稿で、大手企業による広告停止はあまり大きな痛手にならないことが明らかになったためだ。

広告停止を通じた抗議活動へのフェイスブックのPR対応は、あまりうまくいっているとは言いがたいが、株価は動じない。

抗議活動が広がるなかで、マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が社員向け会合で「(停止している)広告主はすぐに戻ってくる」と発言したと報じられ、問題を軽視しているとの批判を受けた。7日、人権団体の代表らとテレビ会合を開いたが、参加者側からは「問題解決への具体的な行動提示はなかった」と失望の声が出た。

フェイスブックが、高まる批判をかわすのは今回が始めてではない。2018年、16年の米大統領選などで同社から英政治コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカに個人情報が流出し、不正な世論操作に使われた疑惑が表面化。フェイスブックを「民主主義を脅かす存在」と懸念する人も増えた。だが、実際に使用をやめた人は少数派で、経営への影響は限定的だった。

欧米の投資家の間では、環境・社会・企業統治を重視したESG投資が支持を集めている。フェイスブックは19年、プライバシー問題への対応が不十分なことなどを理由にESGの主要インデックス「S&P500ESG」から外れた。それでもフェイスブック株が高値をうかがう展開は揺るがない。「ただもうかればいい」という精神を変えようというESG投資の流れが、まだ黎明(れいめい)期にあることをうかがわせている。(ニューヨーク=清水石珠実)

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