ボッチャ、シニアの新たな定番に 地域独自ルールも

2020/7/9 20:55
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名古屋市南区の地域活動「ボッチャサロンみなみ」で競技を楽しむ高齢者ら(2月20日)=南区社会福祉協議会提供

名古屋市南区の地域活動「ボッチャサロンみなみ」で競技を楽しむ高齢者ら(2月20日)=南区社会福祉協議会提供

パラリンピック競技として注目を集めた「ボッチャ」がシニアの人気を集めている。簡単そうに見えて奥深く、世代に関係なく勝負できるため、のめり込む人が多い。より易しくした「独自ルール」をまとめ、地域ごとの大会を開く動きも広がる。お年寄りの新たな定番スポーツとして浸透しつつあるようだ。(茂木祐輔)

「右を狙って投げて!」「もっと強く、強く」。名古屋市南区の高齢者が参加する地域活動「ボッチャサロンみなみ」は毎月1回、ボッチャの練習を重ねてきた。70~80代を中心に多いときで約30人が集まる。目標に向かって力強いボールを投げ込む人がいれば、細かいコントロールを大切にする人も。真剣勝負として盛り上がる。

ボッチャサロンみなみは2019年春、地元で普及に取り組む渡部克己さん(79)の呼びかけで設立された。渡部さんは「技術は大事だが、運もある。床の状態をよく考えながら、試行錯誤するのが面白い」とその魅力を語る。

こうした活動は他の地域でも広がり、19年8月には名古屋市内11区の高齢男性チーム対抗の大会「ダンディ杯」が初めて開催された。活動を支える南区社会福祉協議会の西村美帆さんは「勝負事が好きな男性がはまりやすい。室内の競技なので天候に左右されない良さもある」と話す。

ボッチャは重度の脳性まひや四肢に障害がある人のために、欧州で考案されたスポーツだ。対戦する個人やチームは赤、青いずれかのボール6球ずつを使い、投げたり転がしたりしてジャックボールと呼ぶ白いボールにいかに近づけるかを競う。カーリングのように相手のボールをはじくなどして、自分が優位に立てるよう位置取りをする戦略的な面もある。

高齢者のスポーツとして早くから注目していた地域の一つが、名古屋市熱田区だ。10年ほど前、区の社会福祉協議会が活動計画に盛り込み、独自ルールの「熱田版」を考え出した。投球の際に定められた枠の線を踏んでも違反扱いにしないなど、お年寄りのためにアレンジを加えた。渡部さんも熱田の体験会に参加したことがボッチャに打ち込むきっかけになったという。

16年のリオデジャネイロ・パラリンピックで日本はボッチャ団体で初のメダルを獲得。競技の知名度が高まった。普及を進める「日本ボッチャ協会」(東京)によると、選手や審判、体験会の指導者らを合わせた協会会員数はこの4年間で約200人から900人まで増えた。

シニアのボッチャも全国的に盛んになっており、ここ1~2年で大会や体験会を開く地域が急速に増えた。19年11月に東京で催されたシニアの大会には、都民を中心に32チーム約120人が参加した。

熱田版のように、高齢者が取り組みやすいルールを考案する地域もある。横浜市旭区では同3月に「あさびボッチャルールブック」が作られた。熱田と同様、反則行為を大目にみることを盛り込み、コートの広さは正規の半分ほどにした。

ルールをまとめた一般社団法人あさひ区民利用施設協会の担当者は「いろいろなサイズのコートを試した。難しすぎず、物足りなくもない適度な大きさにした」と話す。19年7~9月には大会を開き、参加者を中心とした同好会が小学生との交流も始めた。

東京パラリンピックに向けてさらに盛り上がりが期待されたが、新型コロナウイルスの影響で大会は延期され、地域のボッチャの活動も休止を余儀なくされた。再開を模索しており、名古屋のボッチャサロンみなみは7月中旬から人数を絞って再び活動する予定だ。渡部さんは「互いに近づいておしゃべりしながらプレーするのは難しいかもしれないが、再開は楽しみ」。マスク着用や手指の消毒を徹底しながら、次の大会を目標に腕を磨く。

●戦略と技 若者とも対等に
 ボッチャは障害の有無や年齢に関係なく対等に勝負し、楽しむことができる。一般の大会でシニアのチームが学生のチームを負かすことも珍しくない。
 日本ボッチャ協会の三浦裕子事務局長は「詰め将棋のように2手、3手先を読む戦略のスポーツ」と説明する。チームのコミュニケーションが重要となるため、研修に取り入れる企業も増えているという。
 名古屋市社会福祉協議会は事務所のフロアを使い、定期的に体験会を開催。企業関係者や福祉施設の職員らを招いている。同協議会の神村昌克さんは「状況に応じて投げるところを考える戦略と、シミュレーション通りに投げる技術の両方が大事。高齢者も含め、多くの人に関心を持ってもらう取り組みを続けたい」と話す。
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