Chim↑Pomが問う「都市とパンデミック」

Tokyoオリパラ
文化往来
2020/7/15 2:00
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緊急事態宣言下の東京で実施したプロジェクト「May,2020,Tokyo」で街中に設置した看板。森田兼次撮影。

緊急事態宣言下の東京で実施したプロジェクト「May,2020,Tokyo」で街中に設置した看板。森田兼次撮影。

緊急事態宣言下の東京と、19世紀に産業革命が進展する裏で多数のコレラ犠牲者を出した英マンチェスター。2つの都市で、アーティスト集団Chim↑Pom(チンポム)が進めたプロジェクトを振り返る企画展がANOMALY(東京・品川)で、22日まで開催されている。資本主義やグローバル化は何をもたらすのか。疫病を切り口に、時間も場所も異なる2都市の視点から問いかける。

人影もまばらな5月の東京。あちこちに日光などの光で図像を焼き付ける「青写真」の看板を設置した。人の姿が消え、都心部でさえ空きが出るような看板広告。東京五輪を意味する「TOKYO 2020」のフレーズ。メンバーの卯城竜太は「人がいなくなっても太陽や雨は変わらない。変わらないもので、変わっていくものを焼き付けたかった」と話す。会場に持ち込まれた看板を眺めていると、様々なものの価値が変わる中で、我々の今後の「青写真」をどう描けばいいのかと悩んでしまう。

マンチェスター市内に設置されたブリック(2019年)。Photo by Kate and Phil Vokes

マンチェスター市内に設置されたブリック(2019年)。Photo by Kate and Phil Vokes

2019年夏にマンチェスターで実施したプロジェクトでは、19世紀のコレラ犠牲者が多数埋葬された地下の廃虚でオリジナル・ビール「ア・ドロップ・オブ・パンデミック」を醸造し、公衆トイレを兼ねたパブで振る舞った。来場者のし尿が混じった汚水を消毒してレンガを作り、そのレンガを街路や家の修復材として提供した。

産業革命の発祥地として知られるマンチェスター。卯城らは芸術祭に招かれて歴史を調べるうち、急速に発展する都市で労働者が劣悪な環境を強いられ、コレラの流行につながったと知る。患者は貧困層が多く、富裕層はそういった「不道徳な人間の生活環境」の改善が必要と考え、上下水道などインフラ整備が進むきっかけになったという。

一度煮沸してから作られるビールは生水より安全とされ、社交場としてのパブも発展した。プロジェクトの記録映像を見ていると、そんな工業都市の歴史に思いが巡る。

「マンチェスターの時には、パンデミックがこんなに身近な問題になるとは思ってもいなかった」と卯城自身も驚く。従来から現代社会に警鐘を鳴らし「誰もが見ないようにしてきたものに焦点を当ててきた。そうしたものに目を向け、考え続けることが大切ではないか」と説く。

(岩本文枝)

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