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河瀬直美監督、なら国際映画祭で「つながり」見つめ直す

文化の風

東京オリンピックの公式映画監督も務める河瀬さん=組画提供

2年に1回、古都に世界の映画が集まる「なら国際映画祭」。6回目の今回は新型コロナウイルスの影響で開催が危ぶまれたが、9月18~22日の開催が正式に決まった。エグゼクティブディレクターとして全体を統括する奈良出身の映画監督、河瀬直美さんに聞いた。

――当初の予定通り開催することを決めた理由は。

国内外の映画祭は8月まではほとんどが中止になったが、9月のカナダのトロント国際映画祭、スペインのサン・セバスティアン国際映画祭などは開催されそうだ。日本でもアートの力を示したいし日本を元気にしたい。世界のニュースは米中貿易戦争や黒人差別問題など「分断」「差別」が目につく。世界の人たちと手を取り合うイベントは相手を思いやり、違いを認め合うメッセージになる。

今回のテーマはトレジャーハント。身近な大切なものを探すという意味だ。映画祭が大切にしてきたのが「つながり」。映像は時空を超えて人と人とを結ぶ。いろんな人たちと出会い、つながるということを見つめ直す。奈良の良さも改めて考えたい。歴史や文化、原始林が残る自然はもちろんだが、欲張ったところがない人々のゆったりとした暮らしぶりが印象的だ。ハレ(非日常)の日よりもケ(日常)に魅力がある。

――海外の映画祭、映画人との連携も深めている。

カンヌ国際、ベルリン国際という世界三大映画祭の2つと既にパートナーシップ協定を結んでおり、招待作品を上映する。今回は縁あってスペイン・カタルーニャ州の文化事業の映画も上映する。学生部門の秀作はカンヌ学生部門に推薦したい。学生部門には毎回海外から多数の応募があるが、今回は100本と前回比倍増した。コロナ禍で発表の場を失った作品の受け皿になったかもしれない。

若手監督が奈良で新作を創るNARAtiveも恒例の企画だ。第5回で観客賞を受賞した中国の気鋭のポンフェイ監督が、中国残留孤児を巡る物語「再会の奈良」を撮ってくれた。

昨年プレイベントとして行われたワークショップで映画撮影に挑む10代の子供たち

――映画文化の継承にどう貢献していくのか。

前回から中高生を対象に「制作」「審査員」を育てるユース育成企画を始めた。今回は新たに「配給宣伝」を加えた。作品を創り評価し、魅力を伝える技術を教える。奈良では伝統工芸や宮大工の技が継承されてきた。映画の技もしっかりと若者に伝え、次代の映画人を奈良から育てたい。

前回並みの15イベント

第6回なら国際映画祭は5日間で約15のイベントを行う。恒例の「自転車発電上映会」は取りやめるものの、前回とほぼ同様の規模だ。一時は「中止やむなし」の声もあったが、スタッフ20人超の開催への熱い思いが背中を押した。NPO法人なら国際映画祭の中野聖子理事長は「今こそ文化の力が必要。楽しみにしている人たちの気持ちに応えつつ、新たなファンを増やしたい」と力を込める。

主要イベントも予定通り行う。若手監督作品の最高賞などを決めるインターナショナルコンペティションと学生作品の最高賞などを決めるNARA-wave学生映画コンペティションだ。ただ、毎回盛大に催す授賞式は入場を半分に制限し、動画投稿サイトにライブ配信する見通しという。

インターナショナルコンペティションでは「観客賞」も贈られる(2018年の第5回)

会場は密になりにくい野外を多く使う。具体的には奈良公園や春日大社などを活用する。前回は奈良県文化会館で行ったオープニングも野外で行う予定だ。

中野理事長ゆかりの「尾花座」が正式に復活することも話題だ。中野理事長はならまちで経営するホテルの名称を、6月から「ホテル尾花」に変えた。昭和50年代まであった前身の劇場、尾花座が由来だ。映画祭では1階の一部を尾花座として活用する。「映画館がない奈良市の映画文化再生につなげたい」(中野理事長)という。(浜部貴司)

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