1年で行政デジタル化 「失われた20年」繰り返す懸念
骨太方針原案

2020/7/8 21:00
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経済財政諮問会議であいさつする安倍首相(8日、首相官邸)

経済財政諮問会議であいさつする安倍首相(8日、首相官邸)

政府の経済財政諮問会議は8日、経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の原案をまとめた。政府に司令塔を設け1年で行政手続きをデジタル化すると掲げた。

行政のデジタル化が骨太方針の目玉になったのは、新型コロナウイルスへの対応で給付の遅さや煩雑さが問題になったためだ。民間ならネットで簡単にできることも行政だと途端に難しくなる。

首相が政策の実施時期を示しても、IT化が遅れた官僚機構では物理的に時間や手間がかかり達成できない。骨太方針の原案は各省庁が数値目標を定めて手続きのオンライン化を進めると記したが、具体的にどの手続きが対象になるかの洗い出しすらこれからの話だ。

政府は20年近く前にも同様の方針を示した。「2003年度には電子情報を紙情報と同等に扱う行政を実現」「5年以内に世界最先端のIT国家となる」。01年に決めたe-Japan戦略はこんな目標を記していた。

いまも国会論戦ではハンコ文化が課題と言われ、骨太方針の目玉は行政デジタル化だ。もし当時の目標通り行政がIT化の先頭を走れば、巨大IT企業の一角に日本企業が名を連ねる別の未来もあったかもしれない。

なぜ日本は失敗したのか。野心的な目標を示しても、政官業が実現する意志を欠いたからだ。まず国内に競争相手がいない行政は自ら効率化・省力化する動機が乏しい。そうした省庁を抑え込む役割は政治のはずだが歴代政権でIT化は最優先課題にならなかった。

米国ではクリントン政権でゴア副大統領が「情報スーパーハイウエー」構想を推進し、現在のインターネット社会や巨大ITの礎を築いた。日本でITは「票にならない」という扱いで、政治の関心は低かった。

そうした政官と密接に付き合うと民間の意欲も薄れる。かつて情報通信産業は国際的な競争力があった。だが21世紀に入っても行政に最先端といえないシステムを売り続けた。官需に頼れば売り上げが確保でき、新分野に挑まなかった。政官業のもたれ合いがあった。

政府は13年、システムを統合するため内閣情報通信政策監(政府CIO)を設置した。だがその傘下で民間出向者が多いIT総合戦略室に各省庁は冷たい。抵抗を突破する権限も乏しかった。米英のように行政組織をまたいで共同調達する仕組みも縦割りの霞が関ではほとんどなかった。

IT人材も霞が関には少ない。IT企業の幹部が政府の要職に就く米国などとは対照的だ。

イタリア政府は新型コロナへの対応でグーグルと組んでオンライン教育に1週間もかからず移行した。日本は今回の骨太方針の原案で教育・医療のオンライン化を唱えたが具体化はこれからだ。

デジタル化の壁となる膨大な手続きや文書主義、縦割り組織、IT人材の欠如はいずれも昔ながらの霞が関の特徴だ。組織の文化から変えなければ失われた20年を繰り返すことになる。

(デジタル政策エディター 八十島綾平)

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