トム・メディック、自律走行型UV殺菌ロボット販売
医療機器販売のトム・メディック(青森市)は新型コロナウイルスなどの院内感染防止に自律走行型紫外線(UV)殺菌ロボットの販売を始めた。紫外線を照射しながら動くことから、短時間で満遍なく病室や手術室など院内を殺菌できる。UV殺菌装置はこれまで時間がかかる手動・固定式が主流だった。自律走行できることで院内感染防止にかける時間や労力を大幅に減らせる。

同社が販売する自律走行型UV殺菌ロボットの名称は「UVDロボット」。デンマークのロボットベンチャー、ブルー・オーシャン・ロボティクス(オーデンセ市)が同国のオーデンセ大学病院の協力を得て開発した。細菌やウイルスを消毒できる自律走行型の商業生産ロボットとしては世界で最初の製品になる。

ロボットを走行させて作る地図に基づいて動くことから、障害物があっても避けられる。磁気テープなどのガイドで決まった動線を自走するロボットとは異なる。
世界では2019年度末で40台近くが使われている。国内では総合南東北病院(福島県郡山市)など大規模病院が導入を始めた段階だ。同じ自律走行型UV殺菌ロボットはオムロンが6月下旬、同社の提供するモバイルロボットを使ったUV殺菌ロボットが10カ国以上で使われていると発表した。
殺菌ロボットが照射する紫外線は強力で、人が浴びると危険だ。手動型では殺菌したいポイントごとに作業者が装置を移動させた後、その部屋から出る必要がある。1カ所で数分の照射時間が必要で、ベッドの左右などポイントは多い。
たとえば、40カ所程度の殺菌ポイントがあるフロアでは、手動型は1日以上の時間がかかる。一方、自律走行型ではあらかじめ設定したポイントに人の手を借りずにたどり着けるため、何回も部屋に出入りする必要もなく、1時間15分程度で完了するという。
導入費用は約2000万円。タブレットで操作する。動かすときは複雑な入力作業などをする必要がなく、2日間の研修で操作できるようになるという。トム・メディックが青森県八戸市に開設した展示場で座学と実際に操作する研修をする。初年度は20台程度の販売が目標だ。
医療現場では人手が足りないうえ、殺菌・消毒作業で二次感染リスクもある。人が作業するがゆえのムラも避けられないなどの課題がある。
病院で勤務経験があるトム・メディックの舘山光浩社長は「院内感染防止は病棟や手術室など多くの場所で必要で、時間や労力などの面で大きな負担になっている」と指摘する。「ロボットはウイルスや細菌の汚染度が高いとみられる場所を集中的に照射しながら自律的に移動するので、感染防止策を大幅に改善でき、現場の負担軽減につながる」と話している。