避難所浸水「どこに逃げたら」 浸水域で対策進まず

2020/7/7 19:07
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水につかった避難所から坂本町地区内の別の避難所に移った住民ら。6日、さらに市街地の避難所に移動することになり荷造りを始めた。(熊本県八代市)

水につかった避難所から坂本町地区内の別の避難所に移った住民ら。6日、さらに市街地の避難所に移動することになり荷造りを始めた。(熊本県八代市)

九州各地を襲った豪雨では、氾濫した川沿いなどにある避難所が次々に浸水し、住民が身を寄せる施設として機能しない事態が相次いだ。水防法は河川管理者に浸水想定区域図の作製を義務づけ、水害対策を促しているが、避難所の増設や配置の見直しといった対策は後手に回っているのが現状だ。

「避難所の保育園に逃げたが、水位の上がり方を見て慌てて車に飛び乗り、坂を駆け上がった」。球磨川の氾濫で大きな被害が出た熊本県八代市坂本町地区の住人男性(73)は大雨に見舞われた4日早朝、近隣住民らと近くの保育園に駆け込んだ。

だが、周辺の水位はみるみる上昇。「ここは持たない」と判断し、車で高台に移動した。保育園はその後、屋根まで水につかり、住民21人は車中泊して救助を待った。このほか、6日に大雨特別警報が出た福岡県大牟田市では避難所となった公民館と小学校が浸水。周辺道路も冠水して孤立状態に陥り、自衛隊が救助にあたった。

球磨川沿いの坂本町地区で倒壊した信号機と流失した坂本橋(奥)=6日、熊本県八代市

球磨川沿いの坂本町地区で倒壊した信号機と流失した坂本橋(奥)=6日、熊本県八代市

多発する大規模水害に対応するため、河川の氾濫による浸水被害想定は2015年の水防法改正で、設定条件が「1000年に1回」級の降雨に厳しくなった。これを踏まえて国や都道府県は洪水浸水想定区域を指定。各市町村は洪水ハザードマップ(災害予測地図)を作製し、住民への周知を進めている。

八代市も19年3月にハザードマップを改定し、坂本町地区では洪水時の避難所を4カ所指定したが、今回は道路の寸断などで職員を派遣できず、一つも開設することができなかった。市危機管理課は「想定を超える雨が降った。避難所の配置は今後見直す必要がある」としている。

市は防災行政無線で、避難所ではなく高台に避難するよう呼びかけたが、洪水ではなく地震など別の災害で使う避難所に逃げ込んだ住民もいた。自宅近くの避難所が洪水時には危険があると認識していなかった可能性もある。

避難所が使えなくなるケースは過去にもあった。群馬県太田市は19年10月の台風19号接近時に45カ所の避難所を開設したが、利根川が氾濫する恐れがあるとして8カ所を急きょ閉鎖した。市の担当者は「利根川が危険な状態になるとは想定していなかった」と当時を振り返る。

避難所の配置を見直す動きもある。今年5月に洪水ハザードマップを全面改定した福岡市は、浸水想定区域の拡大で避難所の倒壊リスクが高まったとして、川沿いの小中学校など42カ所の開設を取りやめた。防災推進課は「安全性の高い場所を最初から避難所に指定した方が望ましい」とする。

18年7月の西日本豪雨で大きな被害が出た岡山県倉敷市は住民の逃げ遅れを想定し、浸水想定区域にある小中学校など57カ所の上層階を市独自の「浸水時緊急避難場所」に指定した。市の担当者は「地形などの特性上、一帯が浸水する地域もある。(国の基準を満たす)避難場所が確保できない地域では逃げ遅れを防ぐ工夫が必要だ」と話す。

九州大の塚原健一教授(防災計画)は、山間部では高台に避難所となる公共施設がない場合や、自治体指定の避難所が高齢者らにとって移動が難しいケースもあると指摘。「洪水ハザードマップを基に、地域の特性に応じて集落ごとに独自の避難計画を作ることが重要で、高台の民家を避難所に使うことなども有効だ」と話している。

球磨川の氾濫で坂本町地区では多くの家屋などが被害を受けた(6日、熊本県八代市)

球磨川の氾濫で坂本町地区では多くの家屋などが被害を受けた(6日、熊本県八代市)

球磨川の氾濫で流され、後輪が浮いたミキサー車(6日、熊本県八代市の坂本町地区)

球磨川の氾濫で流され、後輪が浮いたミキサー車(6日、熊本県八代市の坂本町地区)

水につかった避難所から坂本町地区内の別の避難所に移動した住民ら。6日、さらに市街地の避難所に移ることになった(熊本県八代市)

水につかった避難所から坂本町地区内の別の避難所に移動した住民ら。6日、さらに市街地の避難所に移ることになった(熊本県八代市)

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