個人の景況感、落ち込み最大 雇用・賃金に不安

2020/7/7 22:00
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個人消費の本格回復には時間がかかるとの見方が少なくない

個人消費の本格回復には時間がかかるとの見方が少なくない

個人の景況感が急速に冷え込んでいる。日銀が7日発表した6月の生活意識に関するアンケート調査で、前回の3月調査と比べた景況感の悪化幅が過去最大となった。新型コロナウイルスによる経済の停滞が雇用・賃金の不安を招いており、個人消費の本格回復の妨げになる懸念もある。

日銀の調査は四半期に1度、全国の20歳以上の個人を対象に実施する。今回の有効回答者数は2423人(回答率60.6%)だった。調査期間は5月8日~6月3日で、緊急事態宣言を受けた外出や営業の自粛の影響が色濃く表れた。

景気が1年前より「良くなった」と答えた割合から「悪くなった」を引いた景況感判断指数(DI)は前回から34.9ポイント下がり、マイナス71.2になった。リーマン・ショック後の2009年9月以来約11年ぶりの低水準に沈んだ。落ち込み幅は06年に今の調査方法になってから最大だ。

背景にあるのが所得面での不安の高まりだ。収入DI(1年前より「増えた」から「減った」を引いた値)はマイナス30.2と5年半ぶりの低水準。落ち込み幅は7.2ポイントとやはり最大だ。

実際に個人の賃金は減少が目立つ。厚生労働省が7日発表した5月の毎月勤労統計調査(速報)によると、現金給与総額は前年同月比2.1%減の26万9341円だった。残業時間の減少で所定外給与が25.8%減の1万4601円と大幅に減ったのが響いた。

残業の削減は企業や個人の働き方改革が進んだ面もあり、中長期的には日本全体の生産性向上につながりうる。現状では収入の減少が先行し、個人の景況感の悪化につながっているとみられる。

日銀調査からは個人消費の慎重姿勢もうかがえる。支出DIは13.4ポイント下がってプラス11と約7年ぶりの低水準になり、落ち込み幅は最大を更新した。総務省が7日発表した5月の家計調査をみても、2人以上の世帯の消費支出は前年同月比16.2%減と4月(11.1%減)からさらに細った。

消費支出は週ごとに分析すると、4月27日~5月3日の前年同期比26.4%減を底に持ち直しに転じている。緊急事態宣言が全面解除された5月25~31日の週は1.7%減にとどまった。経済活動の再開や政府による1人10万円の給付金などを下支えに、個人消費は最悪期を脱しつつあるようにみえる。

国内総生産(GDP)の半分以上を占める個人消費が本格的に持ち直すには、家計の不安心理が払拭されるかどうかがカギとなる。日銀調査では1年後の景況感を示すDIがマイナス27.7と14.5ポイント上昇し、約2年ぶりの水準まで改善した。対照的に1年後の収入や支出を示すDIは一段と悪化している。個人が先行きになお慎重な様子が垣間見える。

7月に入って東京都内を中心にコロナの感染者は再び増え始めた。「消費者は不要不急の外出を控えやすくなる」(SMBC日興証券の宮前耕也氏)。「失業予備軍」である休業者は5月時点で423万人と高水準で、企業収益の低迷が長引けば失業者が現実に急増する懸念もある。大和総研の山口茜氏は「家計の節約志向が強いなか、消費がコロナ以前の水準に戻るまでは相当な時間を要する」と指摘する。

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