データ民主主義の先頭へ 坪田知巳さん
関西のミカタ 大阪府スマートシティ戦略部長

関西タイムライン
2020/7/8 2:01
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つぼた・ともおき 1960年大阪市生まれ。84年に同志社大学経済学部を卒業し、日本IBM入社。2014年常務執行役員兼大阪事業所長。公募に応じて20年4月に大阪府のCIO(最高情報統括責任者)・スマートシティ戦略部長に就任。

つぼた・ともおき 1960年大阪市生まれ。84年に同志社大学経済学部を卒業し、日本IBM入社。2014年常務執行役員兼大阪事業所長。公募に応じて20年4月に大阪府のCIO(最高情報統括責任者)・スマートシティ戦略部長に就任。

■情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)、ビッグデータなどを活用して生活の質を高める「スマートシティー」構想が全国各地で動き出し、大阪府も4月にスマートシティ戦略部を新設した。日本IBM常務執行役員から、府の公募に応じて部長に就任した坪田知巳氏(59)は大阪ならではのモデル構築に意欲を見せる。

東京勤務が長かったが東日本大震災の際に外資系企業の大阪誘致を進める仕事をし、ものづくり企業や大学・研究機関の集積、アジアへの窓口といった大阪の強みを再認識した。いずれは故郷の大阪の発展に貢献したいと考えるようになり、2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)を前に大阪が激変する時期なので思い切って転職を決断した。大阪湾に実物大の大阪城を立体空間映像で浮かび上がらせて世界をアッと驚かせるような提案を2025年日本国際博覧会協会にしていきたい。

■大阪府は8月に産学官でスマートシティーを推進するフォーラムを設立する。

大阪は東京と違って財政的に余裕がないのが弱点。民間が参加しないと前には進めない。人口減少や高齢化、過疎化など府内でも顕在化してきた社会問題を解決するのが大阪のスマートシティーの一番の狙いだ。例えば高齢化が進む泉北ニュータウンでは堺市と一緒に高齢者向けサービスを考え、健康医療なら中之島周辺でスタートアップを育てる。ただモビリティーや医療、教育など府内で共通に抱える問題は「見える化」して取り組む必要がある。

どの自治体も公民連携と言うが、実態は民間へ丸投げが多い。民間も自治体との仕事はもうからないので真剣ではない場合もあるし、仮に実証実験が成功しても国の交付金が切れるとビジネス化では東京へ行ってしまう。フォーラムは府や市町村が持つデータをオープンにして課題を示し、民間がもうけられるようにすることで過疎地にも再投資する循環を作る。

米IBMワトソン研究所(ニューヨーク州)で部下と(左から3番目が坪田氏)

米IBMワトソン研究所(ニューヨーク州)で部下と(左から3番目が坪田氏)

■部長就任後、自宅や宿泊施設で療養する新型コロナウイルスの軽症者向け体調管理システムを導入し、保健所や医療機関の負担を軽減した。QRコードを使ったコロナ追跡システムも始めるなど、民間の経験を生かして着々と成果を上げてきた。

QRコードはのべ50万人以上が登録し、他府県や韓国にも横展開され始めた。このシステムの活用店舗と利用者がさらに増えていけば、観光など様々な分野にも使用範囲が広がり、官民で共同企画ができる世界でもユニークなプラットフォームになり得る。

スマートシティー実現では課題も山積している。日本IBM時代に調査したが、小学校から健康診断をしている日本は国民1人当たり一生分の健康データは米国の7倍くらい。しかし、病院、調剤薬局、健康保険組合などにデータが散在し活用できていない。集約して府民に有益なデータとしてフィードバックできれば、万博を開く25年までに健康寿命を1歳延ばすことも不可能ではないと思う。業界の縦割りや既得権益で活用できないのは交通データも同じ。渋滞対策などで改善が必要だ。

個人データは米国では大手ICT企業、中国では中央政府が支配する。日本はデータ活用で国民的議論をしないままコロナ禍に襲われたので他国より対策が後手に回った。今後は自治体が透明性をもってデータを集め、公的利益のために公正中立に住民にフィードバックすべきだ。大前提は第1が透明性。提供したデータが何に使われるかも明確にする。第2はデータの提供を住民の選択に任せる。第3に情報提供によるメリットがデメリットより大きいと明示する。自治体がデータ民主主義の主役になる点で、大阪をトップランナーにしたい。

(聞き手は編集委員 宮内禎一)

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