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両刃の剣になる「5人交代制」 Jリーグにどう影響
サッカージャーナリスト 大住良之

2020/7/9 3:00
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J1が無観客で再開し、対戦する柏とFC東京(4日)=共同

J1が無観客で再開し、対戦する柏とFC東京(4日)=共同

リモートマッチ(無観客試合)ながらようやく再開したJリーグ。7月4日に約4カ月半ぶりの試合を行ったJ1では、期待以上の激しさが見られた。

そうしたなか、今後の戦いに少なからぬ影響を与えそうなのが、今季限りの暫定ルール「交代枠の拡大」である。

本来のルールでは、公式戦での交代可能人数は3人まで。国際サッカー評議会(IFAB)はそれを今年いっぱいの試合に限り、5人に拡大した。新型コロナウイルスによる長期間のスポーツ活動の中断により、再開後は過密日程になることが予想されるために取られた措置。ケガから選手を守るための期限付きルール改正だ。

ただし交代が多すぎると試合の進行が妨害されるため、前半と後半を合わせて試合が動いている時間の交代は3回までとし、そのほかにハーフタイムを使うことができることとした。一度に複数人を交代させるときには「1回」とカウントされる。

だがもちろん、新しいルールが施行されれば、それを効果的に利用して勝利に結びつけようとするのは当然のことだ。

従来では考えられない「3枚代え」も

従来の3人交代制であれば、思いがけない負傷などを考えて、少なくとも1人は試合終盤まで取っておくことが多かった。2月下旬に行われた第1節(3人交代制)では、18チーム中16チームが3人の枠を使いきったが、そのうち13チームが3人目の投入は80分以後だった。

しかし5人制なら、大胆な交代ができる。うまくいっていない試合の流れを変えるため、従来では考えられない思い切った交代で試合を変えようという監督が出るのは当然だ。

再開後初戦、第2節の試合を見てみよう。

横浜FCはコンサドーレ札幌に1-2とリードされて迎えた65分に一挙に3人の交代を断行した。3-3-2-2というシステムで戦っていた横浜FC。下平隆宏監督はMFの両アウトサイド(ウイングバック)とFWを入れ替え、終盤は優勢に立った。清水エスパルスも、名古屋グランパス戦で61分に「3枚代え」を断行した。

興味深いことだが、ハーフタイムでの交代をしたのは、サガン鳥栖ただ1チームだった。「まだ0-0だったが、戦術的な意図で自分たちからアクションを起こしたいと考えた」と金明輝監督。だが皮肉にも、試合は大分が56分に送り出した田中達也に2点を許し、0-2で敗れた。

大分・田中(右から2人目)は後半途中から出場。2点目のゴールを決め、肘タッチで喜ぶ=共同

大分・田中(右から2人目)は後半途中から出場。2点目のゴールを決め、肘タッチで喜ぶ=共同

一般的な傾向として見えたのは、後半の途中から「2枚代え」を1回、あるいは2回行い、試合を通して合計5人ないし4人を交代するというものだった。「2枚代え」あるいは「3枚代え」をしなかったのは、柏レイソル対FC東京の両チームのみ。残りの16チームが同時に複数交代をすることで新ルールを有効に使おうとしていたことがわかる。

柏対FC東京は波乱に富んだ試合だった。FC東京のエースであるFWディエゴオリベイラが負傷して28分で田川亨介に交代、柏は60分にMFヒシャルジソンが退場となり、その対応ができないうちに1点を失った。結局、両チームとも3回の交代で3人しか交代できず、両監督が準備してきたプランは不発に終わった。

湘南に勝利し、決勝ゴールのジャーメイン(右)を笑顔で迎える仙台・木山監督=共同

湘南に勝利し、決勝ゴールのジャーメイン(右)を笑顔で迎える仙台・木山監督=共同

「勝っている場合、負けている場合、ある程度は整理してプランしてきた」

湘南ベルマーレと対戦したベガルタ仙台の木山隆之監督はこう話したが、多くの監督に共通する考え方だったのではないか。試合を見て状況を正確に分析し、必要な手を打つ。その作業が、以前は1人の交代だったのが、2人を入れることができる。それをどう使うかに、各監督は知恵を絞っている。

ただ、J1第2節9試合では、交代選手の得点は、大分の田中のほかは、ヴィッセル神戸とアウェーで対戦して3-0の勝利を収めたサンフレッチェ広島のMF浅野雄也だけだった。浅野はMF柏好文が試合開始早々に故障したため20分からピッチに入り、48分にチームの2点目を決めた。

神戸戦の後半、ゴールを決め喜ぶ広島・浅野(中央)=共同

神戸戦の後半、ゴールを決め喜ぶ広島・浅野(中央)=共同

この日は、横浜MのDF実藤友紀が前半終了直前に広島の柏とまったく同じ右太もも裏の筋肉を痛めて交代した。筋肉系の故障は、中断後、最も警戒を要することだったが、試合の前半に突発的に起こってしまった故障は2人の選手にとって本当に気の毒だった。

こうしてみると、「交代5人制」は、IFABの狙いどおり、「選手たちの安全を守る」ためのものであり、戦術的に使おうとしてもなかなかうまくはいかないようだ。浦和レッズは、おそらく「プランどおり」に58分に両サイドのMF長沢和輝と汰木康也に代えて関根貴大とマルティノスを投入したが、先発の2人ほどの活躍はできず、かえってチームを「尻すぼみ」にしてしまった。

ときに「両刃の剣」となる選手交代。「5人制」はさらにその危険性が高いことを忘れてはならないだろう。J1第2節の9試合で合計78人(1チーム平均4.3人)の交代があったが、逆転試合はわずか1試合だけだった。

サブ9人でよりエキサイティングに

J2では、再開初日の6月27日に徳島ヴォルティスに前半0-3と大差をつけられた愛媛FCが後半4点を取って勝つという大逆転があった。愛媛はハーフタイムに「3枚代え」を断行したのだが、4点のうち3点はCKあるいはFKからのもので、流れのなかからのものは最後の1点だけ。実は前半の徳島の3点もすべてCKで、試合の変化というよりリスタートへの対応の問題だったようだ。

ひとつ気になるのは、5人交代できるのに、ベンチに入るサブ選手は「3人制」のときと変わらず7人となっていることだ。これでは戦術的変更にも限界がある。

1-2とリードされた清水は、交代回数を1回残していたにもかかわらず5人目の交代を使うことができなかった。61分の「3枚代え」で、攻撃的な選手をすべて送り出してしまっていたからだ。残っていたのは、GKとDFとボランチ。「交代5人制」をよりエキサイティングなサッカーに結びつけるには、「ベンチ入り9人」が必要ではないだろうか。

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