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「コロナ解雇」多いスタートアップ業種、輸送が最多

配車サービス大手のグラブ(シンガポール)も6月、全社員の約5%に相当する360人の解雇を発表した=ロイター
CBINSIGHTS
新型コロナウイルスはスタートアップの経営にも大きな影響を及ぼしているが、特にどの業種が打撃を受けたのだろうか。CBインサイツが新興企業の人員削減人数について業種別にまとめたところ、輸送、旅行、小売りの順で多かった。外出規制の影響をもろに受けた格好だ。また、新興国を中心としたフィンテック企業も各国の資金需要が落ち込み、大幅な人員削減に追い込まれている。

米政府が発表した2020年5月の雇用統計は一部で明るい兆しもみられたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて失業率はなお13%に上っている。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

テクノロジー企業もダメージを受けている。ベンチャーキャピタル(VC)から資金を調達するスタートアップは支出を抑え、従業員の一時解雇(レイオフ)に踏み切り、一部は廃業した。

テクノロジー業界のレイオフ情報をまとめたデータベースを活用し、新型コロナの影響が最も大きかった分野について調べた。このデータベースは米企業が約3分の2を占め、スタートアップ企業と最近IPO(新規株式公開)した企業を対象とし、世界保健機関(WHO)が新型コロナをパンデミック(世界的な大流行)と宣言した3月11日以降のレイオフを集計した。

(注)このレイオフのデータベース「Layoffs.fyi」はメディア報道や企業発表に加え、ネットから届いた(レイオフ当事者などの)500人超の情報に基づいて構成している。データは完全ではない可能性もあるが、今回のリポートの目的は満たしている。

一時解雇者が最も多いのは輸送、旅行、小売り 業種別の一時解雇者数(判明分、20年3月11日~6月4日) 出所:Layoffs.fyi

一時解雇者数(判明分)に関して、各国の外出禁止令で最も大きな打撃を受けたのは「輸送」関連だったようだ。ライドシェア大手米リフト(Lyft)は4月に982人を一時解雇し、5月には同業の米ウーバーテクノロジーズ(Uber)が6700人、インドのオラ(Ola)が1400人のレイオフを実施した。ウーバーはさらに、自転車シェアの米ジャンプ・バイクス(Jump Bikes)を売却し、コネクテッドカー(つながる車)のオートマティック(Automatic)をたたんだ。

輸送に次いで打撃が大きかったのは、「旅行」関連だった。仲介の米エアビーアンドビー(Airbnb)やシンガポールのネット旅行会社アゴダ(Agoda)、旅行口コミサイトの米トリップアドバイザー(TripAdvisor)などの大手がいずれも従業員の約25%を一時解雇した。エアビーの一時解雇者は1900人に上った。

「小売り」関連は僅差で3番だった。クーポン共同購入サイトの米グルーポン(Groupon)は4月、従業員の44%にあたる2800人の一時解雇に踏み切った。衣料品のネット通販などを手掛ける米スティッチ・フィックス(Stitchfix)は6月上旬、1400人(従業員の18%)を解雇した。

米国外の金融スタートアップも打撃

「金融」関連も新型コロナ危機で大きな打撃を受けた分野だった。この分野の人員削減数は4番目に多く、人員削減に踏み切った企業数では最も多かった。米国外では状況はさらに深刻で、レイオフを実施した米国以外の企業の24%近くを金融業が占めた。

特に大きな影響を受けたのは新興国のフィンテック企業だった。電子商取引(EC)決済を処理するブラジルのストーネ(Stone)は5月、1300人を一時解雇した。インドのモバイル決済大手ペイティーエム(Paytm)と中小企業向けオンライン融資のレンディングカート(Lendingkart)はそれぞれ500人を削減した。

米企業も無傷ではない。カリフォルニア州に拠点を置くオンライン証券のモチーフ・インベスティング(Motif Investing、累積資金調達額1億2600万ドル)や、ビットコインサービスを手掛けるパース(Purse)は廃業した。

金融サービス、レイオフ実施件数は最多 業種別のレイオフ実施件数(判明分、20年3月11日~6月4日) 出所:Layoffs.fyi

金融分野のうち、レイオフ実施件数が最も多かったのは「融資」と「決済」だった。顧客である中小企業が各国のロックダウン(都市封鎖)で苦境に陥ったため、中小企業向け融資は大きな打撃を受けた。米国以外の決済も広範な需要の落ち込みによる影響を受けた。

ナイジェリアの決済スーパーアプリ、オーペイ(OPay)は従業員の7割を削減したとされる。データベースによると、カナダのモゴ(Mogo)は社員の3割を解雇した。

一方、資金が潤沢な「チャレンジャーバンク(ネット専業銀行などの新興金融会社)」も打撃を受け、レイオフ件数は金融全体の1割に及んだ。英モンゾ(Monzo)は2度に及ぶリストラで計285人を削減した。ブラジルのネオン(Neon)、英レボリュート(Revolut)、独N26などの新興銀行も一時解雇に踏み切ったが、従業員全体に占める解雇者の割合はいずれも10%以下にとどまった。

融資と決済は同じぐらい打撃を受けた 金融業種の中の分野別のレイオフ実施件数(判明分、20年3月11日~6月4日) 出所:Layoffs.fyi

結論

新型コロナの影響は広範囲に及んでいる。テック業界のレイオフに関するデータでは、輸送や旅行に直接影響が及んでいることがうかがえる。もっとも、個別の企業を見ると、意外にも金融が最も大きな影響を受けている。

もう一つの主な傾向は、米国以外のフィンテック企業への深刻な打撃だった。世界銀行は最近、パンデミックにより新興国経済は60年ぶりに縮小するとの見通しを示した。そうなれば、これまでは高い経済成長の波に乗っていた米国以外のフィンテック企業はさらに厳しい状況に追い込まれる。

とはいえ、レイオフは失敗とは限らない。今回のリポートで取り上げた企業の多くは、景気回復や経済再開のシナリオによっては、無駄をそぎ落したことで復活を遂げる可能性がある。

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