働き方改革の富士通、定期代廃止にオフィス面積半減

日経ビジネス
2020/7/9 2:00
保存
共有
印刷
その他

富士通の平松浩樹執行役員常務

富士通の平松浩樹執行役員常務

富士通は7月6日、コロナ後の「ニューノーマル(新常態)」に向けた働き方改革の取り組みを発表した。オフィス面積5割減に通勤定期券代支給廃止、テレワーク手当やジョブ型雇用の導入とてんこ盛りの内容。もっとも、掛け声倒れになれば単なるコスト削減策とも批判されかねない。

「固定的なオフィスへ全員が出勤することを前提とした勤務制度や手当などを全面的に見直していく」。富士通が6日に開催したオンラインでの記者会見。平松浩樹執行役員常務(総務・人事本部長)は、コロナ後の「ニューノーマル(新常態)」を見据えた働き方改革へこう意気込んだ。

6日に発表した富士通の働き方改革はまさに「てんこ盛り」だ。約8万人いる国内のグループ社員のうち、製造拠点や顧客先常駐者などを除く社員はテレワーク勤務を基本とする。7月から全社員に対して通信料や光熱費などの補助として月額5000円の手当を支給することを決めた。一方で、通勤定期券代の支給を廃止し、出勤時にかかった実費を精算する形に変更する。

単身赴任の解消にも取り組む。在宅勤務と出張で業務に対応できると判断した単身赴任者を、7月から順次自宅勤務へと切り替えていく。請負や派遣社員のテレワーク導入も拡大していくという。

テレワークを加速しながら、オフィスの姿も変える考えだ。全席をフリーアドレスにして、自宅やシェアオフィスと合わせて「最適なオフィスを自律的に選択できるようにする」(平松氏)。全国のオフィス面積を、2023年3月期をメドに現状の5割程度まで減らす考えだ。オフィスは、最新技術の実証や顧客との共同作業などに使う「ハブオフィス」と、作業や打ち合わせなどに使える「サテライトオフィス」に改装する。

■ジョブ型制度の全社員導入を検討

コロナ後の働き方を支える人事制度として、いわゆる「ジョブ型」の雇用制度に転換する方針も明らかにした。「適材適所ではなく『適所適材』を実現する」と平松氏は話す。

ジョブ型は果たすべき役割やスキルなど職務を明確化したうえで人材を配置、評価する手法。富士通は20年4月から管理職1万5000人にジョブ型の人事制度を導入した。一般社員への展開に向けた労働組合との議論を21年3月期中に開始する。ジョブ型の雇用制度に必要な「ジョブディスクリプション(職務記述書)」の作成では、「問題がないかを上司や人事を含め、外部のコンサルティング会社も交えながら検証していく」(平松氏)。

7月からは上司と部下の1対1でのミーティングを毎月1回実施する。テレワークを基本とし、雇用をジョブ型に転換する想定の中で、社員に自律的な成長を促す狙いがある。「社内公募も大幅に拡大し、新任管理職の登用も公募にしたい」(平松氏)とする。さらに人工知能(AI)を活用して社員の業務を把握する取り組みも進める。メールや文書のタイトル、スケジュールなどを分析して業務内容を見える化。現状の課題を抽出し、生産性向上に生かしていくという。

■「コスト削減が目的ではない」が……

一連の働き方改革の裏には、「デジタルトランスフォーメーション(DX)企業」という看板を打ち出した企業としてのソロバン勘定も存在する。コロナ後の働き方改革を先導し、培った経験をIT(情報技術)サービスとして顧客に提供していく考えだ。平松氏も「富士通の中で実践し、リファレンスを提供していく。それがDX企業としての富士通の使命だ」と意欲を口にする。

富士通はバブル崩壊後の1993年に日本の大手企業の先陣を切って成果主義を導入するなど、人事関連の新しい制度を積極的に採り入れる企業として知られる。ところが成果主義については、目標を低めに設定したり周囲の社員と成果を奪い合ったりするなどの副作用が出て見直しを迫られた苦い過去がある。

今回の働き方改革では、オフィス面積の半減や通勤定期券代の支給廃止などによって「全体としてコストメリットはある」。平松氏はこう認める一方で、「コスト削減が主目的ではない」と繰り返した。まず社員の生産性向上と業務環境の快適さ向上があり、そこにコスト削減効果も生まれるとの説明だ。

長年にわたる構造改革によって売上高が徐々に減少してきた富士通。最大の目標としている生産性向上を達成し、再び成長軌道に乗せられるか。それができなければ、働き方改革も単なるコスト削減策と取られかねない。

(日経ビジネス 佐伯真也)

[日経ビジネス電子版 2020年7月6日の記事を再構成]

日経ビジネス電子版セット

週刊経済誌「日経ビジネス」の記事がスマートフォン、タブレット、パソコンで利用できます。雑誌発行日の前週の水曜日から順次記事を公開。日経電子版とセットで月額650円OFFです。

保存
共有
印刷
その他

日経BPの関連記事

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]