ITで企業呼ぶ、17兆円効果は鈍化も、リニア延期を聞く
リニア開業延期へ、期待と不安

2020/7/7 15:00
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リニア中央新幹線(東京・品川-名古屋)をめぐる静岡県内の工事で県側の認可が取れず、開業は現計画の2027年から遅れる見通し。中部経済への影響や課題を関係者に聞いた。

中部経済連合会会長、水野明久氏「IT投資、企業呼ぶ下地を」
 「新型コロナウイルスの感染拡大は日本人の働き方を変えた。リニア中央新幹線の開業で名古屋から東京に人材や資金が吸い取られるのではないかといった不安の声があったが、今後は人口過密な東京を避けて名古屋に拠点を移すような動きが広がるのではないか。リニアは東京一極集中を打破する機会になる」
中部経済連合会会長の水野明久氏

中部経済連合会会長の水野明久氏


 「リニア沿線の自治体には通信などのインフラ整備をお願いしたい。経済活動のインフラができれば、地域や企業がイノベーションを起こす機会が生まれる。少子高齢化が進むなか、地方が生き残るにはデジタル革命が不可欠だ。リニアと連結したIT(情報技術)投資を加速し、スタートアップなどを呼び込む下地をつくってもらいたい」
 「新型コロナは日本のデジタル化の遅れも浮き彫りにした。1人あたり10万円を配る政府の特別定額給付金をめぐり大きな混乱が生じたのは、IT基盤の脆弱さに起因する。ここをなんとかしなければ日本の産業は衰退する。行政のデジタル化を訴えるとともに、企業向けの支援拡充を呼びかけていく。スタートアップ支援拠点『ナゴヤイノベーターズガレージ』と、中堅・中小企業の連携も増やしていきたい」
 「リニア開業に伴う経済効果は莫大だ。(静岡県知事とJR東海社長の)トップ会談が開かれたことで話し合いの土俵はできた。2027年の開業目標に向けてペースを上げて議論してもらいたい。地元の信頼がなければインフラ整備は進まない。大井川流域の自治体の理解を得るのは大前提。(JR、県ともに)地元が納得できる答えを用意する必要がある」(聞き手は湯浅兼輔) 

■三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員、宮下光宏氏「17兆円の経済効果、鈍化も」
 「リニア中央新幹線は品川―名古屋間の開業で少なくとも10.7兆円、新大阪延伸が実現すれば16.8兆円の経済効果が生まれると試算している。最大のカギは時間短縮。品川―名古屋は40分で結ばれ、東海道新幹線に比べて約1時間早まる。時短が企業の生産性向上やイノベーション、観光需要の誘発につながる」
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの宮下光宏主任研究員

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの宮下光宏主任研究員


 「効果は地域の経済規模に比例する。最も恩恵を受けるのは首都圏で、次いで近畿圏や中部圏だ。1人あたりの効果でみれば、山梨県といった人口の少ない地域の方が大きい。自然との調和を望む子育て世代が移住したり、企業が本社移転したりするだろう。訪日外国人(インバウンド)の影響は試算に入れていない。新型コロナウイルスの収束後に訪日客が戻れば、効果は底上げされるはずだ」
 「開業の遅れは単純に効果が後ずれするとみればよい。ただ、人口動態の影響を受ける点には留意が必要だ。近畿圏はすでに人口が減少に転じ、中部圏もピークを迎えた。首都圏も2030年代には同様となる。生産の効率化や技術革新、観光促進の効果は当初の見通しより鈍化する恐れがある」
 「既存の再開発計画を見直す時間ができたという考え方が沿線各地で広がるかに注目している。例えば、オランダのアムステルダムでは高速の鉄道駅と道路が直結し、より広域に短時間で移動できるインフラが整っている。こうした事例が広がれば効果は増す」
 「テレワークに伴う移動需要の下押し圧力は中長期では限定的だ。コロナ後に、重要な意思決定は、引き続き対面を選ぶ企業の方が多いとみられるからだ」(聞き手は野口和弘)
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