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都知事選 SNS活用課題残す、非支持層に広がらず

新型コロナウイルスの感染が拡大する中で行われた今回の東京都知事選は、各候補が大規模な集会を控えてインターネット発信を強化するなど、通常の選挙とは異なる光景が見られた。ネット上の「盛況」が支持獲得に結びついたとは必ずしも言えないとの見方もあり「新常態」の選挙手法は模索が続きそうだ。

再選を果たした小池百合子知事(67)は街頭演説を一切行わず、一貫してネット上での選挙戦を展開。利用者層の傾向をみてSNS(交流サイト)を使い分けた。

動画配信サイト「ユーチューブ」では都内の62区市町村ごとに「オンライン演説」を公開し、ビデオ会議システムを通じて大学生との意見交換会も行った。小池氏は6日の記者会見で「街宣車の上から叫ぶ街頭演説より、双方向のやりとりができたのは発見だった」と手応えを口にした。ただ、約80本の動画の再生回数は3000回に満たないものが多かった。

元日本弁護士連合会会長の宇都宮健児氏(73)の陣営幹部によると、選挙戦の序盤は配信動画の制作を経験の浅いスタッフが担うなど手探りな面もあったが、中盤以降はボランティアとして映像制作のプロが加わった。

動画の再生回数は、選挙戦序盤は数百回程度のものが多いが、中盤以降は4000~7000回程度再生された動画が目立つようになった。陣営幹部は「手応えを感じ始めている。オンラインでの選挙戦略は今回の結果を丁寧に分析して次に生かす」と話した。

一方、れいわ新選組代表の山本太郎氏(45)の動画は10万回以上再生されたものも多く、話題性は高かったが、得票には結びつかなかった。

元熊本県副知事の小野泰輔氏(46)の陣営は、IT企業の社員ら20代を中心とした約60人のデジタル専門チームを編成。九州や東北などから遠隔で協力するスタッフもおり、ホームページなどのデザインやSNSでの情報拡散などを担った。

ツイッターには小まめな投稿を心がけ、当初は数百程度だったというフォロワー数は最終的に3万まで伸びた。ただ、選挙の終盤では街頭演説の回数を序盤の倍近くに増やした。陣営は「ネットでは人柄は伝わりにくい。街頭とオンラインの両輪をやらないといけない」としている。

選挙コンサルティングを担うジャッグジャパン(東京・渋谷)社長の大浜崎卓真氏は、ネットを活用した選挙戦は「急速に進まない。模索が続くだろう」とみている。動画サイトやSNSは有権者が自らアプローチする必要がある。閲覧者は従来の支持層にとどまっているとして「新たな支持層を引き込んだわけではない」と話す。

ネットと選挙に詳しい東京工業大の西田亮介准教授(情報社会論)も「ネットの情報は有権者が自ら探さなければならない。関心の高い層には訴えは届くが、非支持層にまで支持を広げるきっかけにはならなかった」と指摘。「単にネットを使うだけでは日本では支持は広げられない。街頭演説など従来型と組み合わせた手法を模索することになるのではないか」と話している。

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