高齢者施設、相次ぐ被害 避難など「早期決断」カギに

2020/7/6 17:45 (2020/7/6 18:48更新)
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豪雨で球磨川が氾濫し、浸水した特別養護老人ホーム「千寿園」(4日午前、熊本県球磨村)=共同

豪雨で球磨川が氾濫し、浸水した特別養護老人ホーム「千寿園」(4日午前、熊本県球磨村)=共同

熊本県南部を襲った記録的豪雨で6日、同県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」の14人の入所者の死亡が確認された。高齢者施設では近年、自然災害による被害が相次いでいる。国は避難計画作りを義務付けたが、雨が計画で想定した以上のペースで降ることもあり、専門家は「早期の避難決断がカギ」と指摘する。

住民らの話によると、日本三大急流のひとつ、球磨川の支流近くにある千寿園を濁流が襲ったのは4日朝。当時は当直の職員数人と集まった住民らが、寝たきりや車いすの高齢の入所者を1階から2階に避難させていたが、14人が心肺停止の状態で見つかり、その後死亡が確認された。施設にはエレベーターがなく、避難に時間がかかったとみられる。

運営法人の報告書などによると、千寿園は2000年にオープンした。県によると、当日は65人が在所し、救助された51人は医療機関に搬送された。

集中豪雨や台風によって高齢者施設が被害を受けるケースは近年相次いでいる。16年の台風10号では岩手県岩泉町の高齢者グループホームに氾濫した川の水が流れ込み、入居者9人が犠牲になった。

国はこれを受けて、17年に水防法などを改正。浸水の恐れがある地域の福祉施設などに対し、避難先や移動方法をまとめた避難計画策定と訓練の実施を義務付けた。ただ国土交通省によると、計画を作っていた施設は、対象の6万7901施設のうち19年3月末時点で35.7%どまりという。

19年に台風19号による浸水被害にあった埼玉県川越市の特養「川越キングス・ガーデン」は避難計画に基づく早期避難が功を奏し、入居者全員が無事だった。同施設は停電でエレベーターが使えなかったが、当直や避難に備えて集まった24人の職員が総出で利用者を移動させた。

淑徳大の結城康博教授(社会福祉学)は「避難計画の策定や訓練に取り組む施設は増えているが、実際に災害が起きる前にいかに『万が一の事態』を想定して早めに決断し、行動するかがポイントになる」と強調する。

川に近く浸水想定区域内にある千寿園は避難計画を作り、年に2回の避難訓練も実施していたが被害を防げなかった。線状降水帯の発生状況などによっては、想定を超える雨が短時間に降ることがある。

千寿園がある球磨村の渡地区に国交省が設置した水位計のデータによると、4日午前0時に3.16メートルだった球磨川の水位は同3時に8.33メートルまで上昇。同7時には12.55メートルに達し、以降は欠測となった。国土地理院は同地区周辺の浸水の深さが、川に近い田畑の辺りで深さ8~9メートルに上ったと推定している。

今回のように災害が未明や深夜に起きることもある。結城教授は「夜勤の時間帯は職員数が少ないため、前日のうちに職員を多めに集めたり、2階に利用者を移動させたりするなどの準備もカギだ」と話している。

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