ウィズコロナの住宅ローン 金利以外のリスクに備えを
20代からのマイホーム考(4)

新型コロナウイルスの影響で経済活動が停滞し、4月、5月の住宅取引件数は半減しました。しかし、6月の東京23区における中古マンション取引件数は、筆者調査によると、前年同月比で6割強まで戻してきました。こうした状況にあっても住宅を取得したいというニーズがあるということは、住宅ローンによる資金調達ニーズも依然として強いと思われます。今回はコロナ禍における住宅ローンの留意点について考えてみます。
住宅ローンのタイプ別特徴
住宅ローンの金利タイプには、固定金利型、変動金利型、固定期間選択型の3つがあります。
固定金利型はフラット35などのように借入期間中の金利が一定である商品です。元利均等返済であれば、返済期間を通じて返済額が一定で、資金計画が立てやすいというメリットがあります。金利は変動型などに比べると高めです。
変動型と固定期間選択型は金利が変動するタイプの商品です。変動型は3つのタイプの中で金利が最も低いため人気の商品です。返済額は5年間一定で、返済額が上昇する場合は、従前の返済額の1.25倍が上限というルールがあります。金利が上昇した場合、支払いに堪えられる収入や余裕資金を持っているか否かがポイントになります。
固定期間選択型は、当初の2年から10年程度の期間は固定金利、期間経過後はその時点での固定金利か変動金利を選ぶというものです。変動型のように返済額の急増を抑える仕組みがありませんので、金利が上昇した場合は、固定期間が終了すると返済額が大幅に増える可能性があります。
金利変動だけではない住宅ローンのリスク
このように住宅ローンは金利タイプによって商品が異なるため、今後の金利をどう読むかによって商品選びが変わるといわれていました。
しかし、コロナ禍の下では、別のリスクにも目を向けなければならないと考えています。特に重要なのは収入減少リスクです。コロナ禍で住宅ローンの返済に困る人が増えており、報道によれば、3月10日から5月末までに、全国の銀行に返済負担軽減のための条件変更の申し込みが約1万4000件あったといいます。
将来の可処分所得減少リスクも考えておく必要があるでしょう。今回のコロナ禍ではサプライチェーンが寸断、これまでのグローバル生産体制が見直され、生産の国内回帰が進む可能性があります。これにより生産コストが上昇し、じわじわと物価が上がる可能性があります。しかし、好景気にはならないので個人の所得は増えず、実質的に使えるお金(可処分所得)が減少するというリスクです。
また、今回の財政出動のツケとして、増税も予想されます。こうなると、さらに可処分所得が減少し、ローンの支払いに影響を及ぼす可能性が高まると筆者は考えています。
不動産価格の下落もリスクの一つ
毎月のローン返済が厳しくなった場合、銀行に対して「返済期間を延長する」「返済額を一時的に下げる(後で上昇させる)」といった交渉も可能ですが、銀行との交渉が折り合わない場合には、住宅を売却せざるを得なくなります。仮に売却価格よりも、残る債務のほうが多ければ、売るに売れない状態に陥ります。
昨年12月以降の東京23区中古マンション価格推移を見ると、平均成約単価は緊急事態宣言のもとで下落傾向を示していましたが、今年5月、6月は多少の戻りが見られます。平均成約単価ですから、実際に成約した物件が単価の低い地域や築年数の古いものなどに集中している可能性もあります。そこで、そうした点を調整して筆者が算出した結果を「価格指数」として示したのが、青い折れ線グラフです。

この指数を見る限り、2月から5月は低迷していましたが、6月にはおおむね戻した感があります。しかし個別の区でみると、千代田区、中央区、港区などの中心部は、1月の指数より6月の指数のほうが2~5%程度高くなっていましたが、足立区や台東区は6~9%程度低くなっていました。今後、立地によって価格動向にばらつきが生じる可能性も視野に入れておく必要があるでしょう。
無理のない住宅ローンの組み方とは
このように考えていくと、住宅ローンを組む際には、ぎりぎり支払いができるというような返済計画を立てないことが重要です。また、不動産価格の下落リスクをヘッジする方法として自己資金(頭金)を増やすことを考えましょう。価格が下がりにくい立地ならば、自己資金は、保証料などの各種経費を加味して、売買価格の1割程度でも問題ないかもしれませんが、価格下落が1~2割程度と予想されるようなら、自己資金を2割から3割程度、準備したほうがよいかもしれません。

住宅資金は老後資金、教育資金と並ぶ人生三大資金です。20代、30代から考えたい「失敗しないマイホーム選び」について不動産コンサルタントの田中歩氏が解説します。隔週月曜日に掲載します。
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