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九州大雨「前見えないほど」、線状降水帯が形成か

夜明け前の集落を猛烈な雨が襲った。大量の雨をもたらす「線状降水帯」が形成されたとみられ、熊本県の球磨川が氾濫したほか各地で土砂崩れ、道路の冠水などが相次いだ。「1階が浸水して避難できない」「車が水に漬かっている」。被災住民は声を震わせた。

「経験したことのない量の雨で、外はほとんど前が見えなかった」。熊本県人吉市で喫茶店を営む男性は声を震わせた。店舗兼住宅は高台にあり、大きな被害はなかったが、4日午前6時ごろに市中心部に住むめいから「1階が1メートルほど浸水して避難できない」と電話があった。

様子を見に行こうとしたが、球磨川の増水で大半の橋が通行できず、断念した。男性は「支流も氾濫しているようだし、ダムの放流もあるかもしれない。心配だ」と不安げに話した。

同県八代市の球磨川沿いの寺の女性は「道路は茶色い水で塞がって身動きが取りにくい」と話した。高台の公民館に避難する住民もいるといい、「これほどの浸水をもたらす大雨は初めて」。

同県芦北町総務課の男性職員によると、天候が急転したのは4日未明。短時間のうちに雨脚が強まったという。町役場周辺の国道3号や県道は漬かっており、自動車が通れない状態。茶色く濁った水があふれ「ボンネットが見えないくらい、車が水に漬かっている」と動揺した様子だった。

芦北町の自営業、斉田栄来さん(47)の自宅前は膝上まで水位が上がり「道路が川のようになった。周辺は3カ所で崖崩れが起きていた」。道路は土砂で埋まり、人が通れない状況という。

水俣芦北広域行政事務組合消防本部によると、多数の119番が入っているが道路が寸断され、消防隊が近づけない状態。午前11時半時点で、数人から数十人のけが人が出ているとみており、担当者は「逼迫した状況」と話す。

熊本県内では湯前町で24時間降水量が観測史上1位を更新する489.5ミリに達するなど各地で記録的な大雨となった。国土交通省が県内を流れる球磨川に設置したライブカメラには大雨による増水で橋が冠水している様子が映し出された。

気象庁は4日午前6時、臨時記者会見を開き、「土砂崩れや浸水による被害がすでに発生している可能性が極めて高い」として最大級の警戒を呼びかけた。積乱雲が連続して発生する「線状降水帯」が形成されたとみられる。

同庁によると、九州付近に停滞している梅雨前線に暖かく湿った空気が流れ込み、九州南部で大気の状態が非常に不安定となっている。雨雲が帯状に連なった線状降水帯が形成され、猛烈な雨が続いており、土砂災害や浸水、河川の氾濫に厳重な警戒を求めている。

同庁は雨のピークは同日午前で過ぎるものの、球磨川などは氾濫危険水位を超える状態が続くとして引き続き警戒を呼びかけている。

 ▼線状降水帯 積乱雲が次々に発生し、帯状に連なる現象。暖かく湿った空気が続けて流入し、強い上昇気流があり、上空に一定方向の風が吹くという条件がそろうとできやすく梅雨から秋に多い。
 線状降水帯による大雨被害は近年相次いでいる。福岡、大分両県で関連死を含め40人が犠牲になった2017年7月の九州北部豪雨や、広島県や岡山県などで200人以上が犠牲になった18年7月の西日本豪雨などが代表例だ。

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