メルセデスが仏工場売却へ 各社、過剰生産能力にメス

2020/7/4 1:47
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【フランクフルト=深尾幸生】世界の自動車大手が過剰な生産能力の削減に着手し始めた。独ダイムラーの乗用車事業会社メルセデス・ベンツは3日、フランス東部の工場を売却すると発表した。新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ世界の新車需要が回復するには時間がかかるとみて生産体制を見直す。

小型車「スマート」を生産する仏東部のハンバッハ工場(写真は2009年)=ロイター

メルセデスの動きは工場の新設計画を撤回したり延期したりした独フォルクスワーゲン(VW)や独BMWなどに続くものだ。メルセデスが売却するのは「スマート」ブランドの小型車を生産しているハンバッハ工場。1600人の従業員を抱え、ロイター通信によると2017年の生産台数は約8万台だった。今後売却に向けた交渉を始める。

メルセデスはスマート事業を中国民営自動車最大手の浙江吉利控股集団との合弁に切り替え、22年に発売するモデルから中国で生産することを決めている。ハンバッハ工場ではスマートの中国移管後はメルセデスブランドの小型電気自動車(EV)を生産する予定だった。

ダイムラーのオラ・ケレニウス社長は声明で「新型コロナの影響は市場の前提を変えた。それにあわせて生産体制を最適化する必要がある」と述べた。リストラ費用として4~6月期に数億ユーロ(数百億円)の特別損失を計上する。

新型コロナは世界の自動車産業に大きな影響を与えている。独自動車工業会(VDA)が同日発表した1~6月のドイツの自動車生産台数は前年同期比40%減の149万台だった。通年でも前年比25%減になると予測する。

調査会社の英LMCオートモーティブによると、20年の世界の自動車工場の稼働率は5割を割り込む。6割強だった19年の水準に回復するのは23年までかかる。一般的に自動車工場が黒字になるためには稼働率が7~8割必要とされる。

新型コロナで市場の成長の前提が崩れたことから、自動車大手は相次いで生産計画を見直している。VWは1日、内定していたトルコの新工場建設計画を撤回したことを明らかにした。10億ユーロ以上を投資しVWの主力車「パサート」など傘下の複数ブランドの車種を生産する予定だったが、東欧にある既存工場で生産することを決めた。

BMWは20年春に建設開始を予定していたハンガリーの新工場の開業を1年遅らせる。日産自動車も5月、スペイン・バルセロナの商用車工場の20年末の閉鎖に向け協議に入ると発表した。同工場の稼働率は新型コロナ前から25%を下回っていたという。

LMCのアナリスト、ジェフ・シュスター氏は「新型コロナはリスクを増幅した。もともと稼働率が低かった工場に決断を迫るだろう」と話す。自動車各社は電動化やデジタル化に向けた投資がかさむなか、需要が落ち込む事態に直面している。コスト削減のための工場の閉鎖が、今後も続く可能性は否定できない。

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