綱渡りの介護サービス、人材拡充の備えを
次の波までに 野口晴子・早稲田大教授

2020/7/3 19:00
保存
共有
印刷
その他

集団感染が起きた札幌市の介護老人保健施設で、入所者(右)に寄り添う防護服姿の介護スタッフ(同施設提供)=共同

集団感染が起きた札幌市の介護老人保健施設で、入所者(右)に寄り添う防護服姿の介護スタッフ(同施設提供)=共同

新型コロナウイルスの感染拡大によって各地の福祉施設でクラスター(感染者集団)が発生し、介護サービスの低下や停止を余儀なくされた。緊急事態宣言が解除された後も、北九州市の特別養護老人ホームで集団感染が起きた。備えのポイントを、社会保障論を専門とする早稲田大の野口晴子教授に聞いた。

2~3月、名古屋市の通所介護(デイサービス)施設で集団感染が発生した。市は計126施設に2週間の休業を要請したが、半数近くが営業を続けた。野口教授は「そうしなければ利用者は行き場を失ってしまうところだった」という。

野口晴子・早稲田大教授

野口晴子・早稲田大教授

2018年度の全国の訪問介護の有効求人倍率は13倍を超え、他業種と比べて際だって高い。「施設に利用者を大勢集めて効率化することで、なんとか介護を維持している現状がある」

再び感染拡大の波が襲って来たときにケアを提供し続けるための対策として、野口教授は「医療と介護の連携強化」を挙げる。コロナ対応で集中治療室(ICU)などが逼迫する一方、外来減少で打撃を受けた病院もある。余力のある医療の施設、人材を活用し、行き場を失った介護利用者らのケアを担う仕組みをつくれば「介護と医療の双方にプラスになるはずだ」と提案する。

大学、専門学校で医療や介護を学んでいる学生は資格を取得していなくても現場で活躍できる。「こうした人たちのネットワークをつくることも一手。最低限の技能や知識を身につけられる研修を自治体で開催して担い手を育成してもいい」

厚生労働省によると、25年度に介護人材は34万人不足するとされている。国はこれまで外国人材の受け入れで補強しようと計画してきたが、コロナ禍のように世界全体を襲う危機が訪れれば実現は容易でない。「外国人材への依存はもはや万能薬にならない。介護人材の賃金向上、待遇改善という根本的な問題の解決を急がなくてはならない」と野口教授は強調する。

介護保険の自己負担は原則1割。日本では医療や介護に大きなコストがかかるとの意識が非常に薄い。介護の供給破綻を避けるには「介護人材の労働に見合うだけの報酬を社会全体で、私たち1人1人が負担していく覚悟が必要だ」と訴える。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]