九州北部豪雨3年 教訓生かし「早期避難」の動き

2020/7/3 16:24
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福岡、大分両県で42人の死者・行方不明者を出した九州北部豪雨は5日で発災から3年となる。土砂崩れや河川の氾濫など短時間で深刻な被害をもたらす豪雨から住民の命をどう守るのか。3年前の教訓を踏まえ、被災地では行政だけでなく、住民が主体となって避難方法を検討する動きが活発になっている。

豪雨で流木が突き刺さった家屋(2017年7月、福岡県朝倉市)

豪雨で流木が突き刺さった家屋(2017年7月、福岡県朝倉市)

「夕立かと思っていたのに、まさか急に大雨になるとは」。地域を流れる乙石川が氾濫し、5人が犠牲となった福岡県朝倉市杷木松末の石詰地区。80代の女性は自宅に一人の状態で濁流に襲われた当時を振り返る。

雨が降り始めた時は近所の人の「家が安全だ」との助言もあり避難しなかったが、約1時間後には滝のような雨が地面をたたきつけた。

命の危険を感じて2階へ避難したが、流木の衝突で家は揺れ、柱に抱きついて一夜を明かした。消防のヘリで救助されると、「助かったんだ」と涙があふれた。

被災後は息子家族と市外に転居したが「住み慣れた場所に戻りたい」と2019年7月、以前の自宅から5キロほどにある災害公営住宅で一人暮らしを始めた。「慣れ親しんだ景色も見えるし、気心の知れた友人もいるのでうれしい」と感じるが、今も雷雨のたびに体が震えるという。

3年前の豪雨では、積乱雲が帯状に連なる「線状降水帯」が長時間発生し、九州北部に記録的な雨をもたらした。朝倉市では半日で雨量が500ミリを超え、同県東峰村や大分県日田市などでも土砂崩れや河川の氾濫が発生。被災地域では、天候の急激な変化を察知して早期避難につなげる取り組みが本格化している。

東峰村の行政区ごとに作られた災害時のタイムライン

東峰村の行政区ごとに作られた災害時のタイムライン

豪雨で住民3人が犠牲になった東峰村は19年、村内の全15行政区が災害に備え、いつ、どんな行動をとるかを時系列で一覧表にした「タイムライン」を作成した。住民個人がとるべき行動も「マイ・タイムライン」としてまとめた。

災害の恐れがある早期の段階で行政区は一時避難所の備蓄品や避難路の確認を開始。住民も避難経路と非常時の持ち出し袋を確認する。洪水警報が発令され、より切迫すれば、行政区は要支援者の避難を始め、住民も動きやすい服装に着替えて戸締まりするなど避難を見越した行動に移る。

村の担当者は「タイムラインは玄関や冷蔵庫のドアなど自宅内の見やすい場所に貼ってもらうよう呼びかけている。避難訓練などで見つかった課題を踏まえ、定期的に見直してほしい」と話す。

朝倉市は九州北部豪雨後に設けた避難基準で、土砂災害などに関する情報を参考に災害復旧の途上にある地域への避難情報の提供を他地域より1段階先行させた。例えば、大雨警報(土砂災害)が出た場合、復旧工事が行われている山間部の地域には避難勧告を実施。他地域より先行して避難情報を出すことで早期の避難を明確化した。

九州大の三谷泰浩教授(防災工学)によると、災害時に行動を起こす起点となるマイ・タイムラインは各地で作成の動きが広がっているという。集中豪雨の降り方は近年、変わってきているといい、「住民はマイ・タイムラインなどを作成し防災のことを自ら考えるとともに、自治体は避難情報を適切なタイミングで出せるかが重要になる」と指摘している。

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