「転校生に自粛要請」は差別? 岩手4市町村の対応が波紋

2020/7/3 9:42 (2020/7/3 16:11更新)
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奥州市は4月、関東からの転校生の自宅待機を要請した(同市HP)

奥州市は4月、関東からの転校生の自宅待機を要請した(同市HP)

新型コロナウイルス感染者が確認されていない岩手県内の4市町村で、県外からの転入生に登校自粛を要請した対応が波紋を広げている。差別防止への配慮か、過剰反応なのか――。要請は既に解除されたが、SNS(交流サイト)などでは賛否がなお渦巻く。

「もし転入生が県内の感染者第1号となれば村八分にあう」「慎重になりすぎるあまり、逆にいじめや差別を助長しないか」。感染者の多い首都圏などからの転入生に対し、一関市、奥州市、洋野町、九戸村の各教育委員会が求めた2週間の登校自粛。SNSではこんな対立する意見が飛び交っている。

同県では現在まで一人の感染者も報告されておらず、全国的な感染拡大に伴う国の要請で臨時休校を実施した小中学校も4月上旬に再開した。その際に登校自粛の要請を受けた計20人以上の転入生が自宅待機などをして過ごした。各教委によると、保護者の同意も得られていたという。

潮目が変わったのは、6月下旬になってからだ。事態を把握した文部科学省から「一律に登校自粛を求めるべきでなく、不適切」との指摘があり、県教委は「児童、生徒本人や保護者の症状などを確認したうえで自宅待機を要するかどうか判断してほしい」と4市町村の教委に要請し、各教委はこれに応じた。

ただ、自粛要請に至った背景として、奥州市教委の担当者は「学校再開を懸念する保護者もおり、子どもの健康を第一に考えた結果だ」と話す。一関市教委は「転入生が心ない言葉を浴びる懸念があった」として、いじめにつながる可能性を考慮したと理解を求める。

こうした対応を巡っては、「いじめを懸念するあまりの過剰反応ではなかったか」との意見もSNSなどで目立つ。

過去には、東日本大震災による東京電力福島第1原子力発電所事故で福島県外に避難した子どもが、放射線への理解不足などによって転校先でいじめられるケースが問題になったことがある。国は、背景として配慮に欠ける大人の言動を挙げていた。

NPO法人「ストップいじめ!ナビ」(東京)の須永祐慈副代表は、今回の対応を「新型コロナへの誤解や偏見といった大人の価値観が子ども同士のいじめの材料になりかねない」と批判。「学校現場に求められるのは、感染症に対する正しい知識を子どもたちに教えることだ」と呼び掛ける。

実際、手洗いや3密(密閉、密集、密接)の回避を徹底すれば、感染リスクが低いことは、既に多くの専門家らによって指摘されている。津田敏秀・岡山大大学院教授(環境疫学)は「若年者は重症化リスクも低く、医学的観点からも(転入生に対する)自粛要請は必要なかった」と話している。

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