マドゥロ政権に新たな痛手、英で「金」の所有権失う

2020/7/3 6:35 (2020/7/3 8:42更新)
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【サンパウロ=外山尚之】英国の高等裁判所に相当する高等法院は2日、ベネズエラ中央銀行が英イングランド銀行(中央銀行)に預けていた10億ドル(約1075億円)相当の現物の金について、所有権は野党陣営にあるとする判決を下した。資金難のマドゥロ政権に新たな痛手となる。

ベネズエラのマドゥロ大統領(6月29日、カラカス)=ロイター

金はベネズエラ中銀がイングランド銀に預けていた。マドゥロ大統領が2019年に独裁体制を確立したことを受け、引き出せなくなっていた。

英政府は野党指導者のグアイド国会議長を暫定大統領として承認している。ロンドン高等法院のティアー判事は2日、誰が正統な大統領かを決める権利は英政府にあるとして、返還を求めるベネズエラ中銀の訴えを退けた。改めてグアイド氏を正当な大統領であるとのお墨付きを与えた形になる。

歴代左派政権の失政や米国の経済制裁で、ベネズエラ経済は破綻状態にある。ベネズエラ中銀によると、直近での外貨準備高は64億ドルだが、今回の判決でこのうちの15%を失う。既に1年前と比べると2割以上減少しており、外貨不足が一層、深刻になる。

ベネズエラでは石油生産の減少に歯止めがかからず輸出低迷が続く上、新型コロナウイルスの拡大で海外からの送金が停滞、経常収支の悪化は加速している。ロシアやトルコ、イランといった反米国からの支援頼みの状況だが、これらの国も新型コロナのまん延で経済状況は厳しく、十分な支援は期待できない。

経済的に苦境が続くマドゥロ政権だが、独裁体制を維持している。マドゥロ政権の管理下にある全国選挙評議会は1日、野党が過半数を占める国会の議員選挙を12月6日に実施すると発表した。主要野党はボイコットを示唆しているが、マドゥロ政権はこれまでも主要野党を排除した選挙での「勝利」によって民意が自らにあると主張してきた。軍部も離反しておらず、表面上の政治体制は盤石だ。

事態が打開できない中で、グアイド氏の後ろ盾となっていたトランプ米大統領は6月下旬、マドゥロ氏との会談を検討すると発言した。その後、国内外からの反発を受け、マドゥロ氏の退陣を条件とするなど軌道修正したものの、米国の対ベネズエラ政策が奏功していないことを浮き彫りにした。

一方でベネズエラ国内ではマドゥロ氏退陣にめどが立たないことから、グアイド氏が率いる野党陣営の求心力も落ちている。マドゥロ氏とグアイド氏の間で膠着状態が続く中、新型コロナの感染拡大もあり国民の困窮状態は一層、厳しさを増すばかりだ。

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