中銀デジタル通貨、準備を加速 日銀が実証実験へ

2020/7/3 2:00
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日銀はデジタル通貨の技術的な課題を洗い出した

日銀はデジタル通貨の技術的な課題を洗い出した

日銀は中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)の実現を見据えた準備を加速する。2日に技術面の論点をまとめたリポートを公表し、課題解決に向けて実証実験に乗り出す方針を明らかにした。現金を介さないデジタル決済の需要が高まり、中国などの発行計画も進むなか、日銀も出遅れないように踏み込む。

日銀は2月、決済機構局内にCBDCの研究チームを立ち上げており、今回のリポートは第1弾になる。CBDCの実用化には現金同等の機能を持つ必要があると指摘した。具体的には「誰でも、いつでも、どこでも安全・確実に利用できる決済手段」という役割を求め、そのための技術的な課題を洗い出した。

特に重視したのは誰でも使える「ユニバーサル・アクセス」の確保だ。現在のデジタル決済はスマートフォンを使ったタイプが浸透しているが、日本のスマホ普及率は65%(2018年時点)にとどまり、持っていない子供や高齢者などは利用できない。このため「多様なユーザーが利用可能な端末の開発が重要だ」と指摘した。

もう一つの課題に、環境に左右されずにいつでも利用できる「強靱(きょうじん)性」も挙げた。スマホなどを使う電子的な決済手段は通信や電源が確保されていない状態では使えないケースが多く、地震などの非常時の利用に不安を残す。こうした「オフライン」の環境でも決済できる機能の確保を求めている。

現在もスマホの無線通信技術を使ったオフライン決済は可能とみられるものの、利用状況の正確な把握やマネーロンダリング(資金洗浄)などの犯罪対策が課題とした。オフライン決済では利用金額に上限を設けるといった案も示している。

一連の論点整理を踏まえ、日銀は実証実験でCBDCの実現可能性を探る考えを示した。開始時期は明らかにしていないが、民間の金融機関や決済事業者などと連携し、オフラインの環境でも決済できるかといった技術面の検証に取り組むとみられる。

日銀は決済分野で民間との協力を進めるため、2月に「決済の未来フォーラム」という協議の場を立ち上げた。その下に「デジタル通貨分科会」をつくり、今月30日に初会合を開く。今回のリポートで示したCBDCの技術的な課題もテーマになる。

日銀はCBDCについて「現時点で発行する計画はない」とのスタンスを変えていないが、デジタル決済の需要拡大を踏まえ、準備を進めるとしている。1月には欧州中央銀行(ECB)など海外の5中銀などと共同研究グループを発足した。

CBDCを巡っては、中国が数年内の「デジタル人民元」の発行に向けた準備を急ぎ、米連邦準備理事会(FRB)も独自研究を進める。19年に米フェイスブック主導のデジタル通貨「リブラ」の構想が浮上し、自国通貨の流通が細れば金融政策や銀行システムに大きな影響を与えかねないとの懸念から、CBDCの検討が各国で進んでいる。

■■中国先行に焦り 政府・自民

政府・自民党は中央銀行デジタル通貨(CBDC)発行に向けた検討を急ぐよう日銀の背中を押してきた。中国は「元の国際化」へ「デジタル人民元」の実証実験を急ぐ。米ドルの通貨覇権に挑む中国への危機感から、米国との連携による対抗を促す。

自民党は6月下旬にまとまった政府の成長戦略への提言で、CBDCについて「米国と連携しつつ技術的な検証を狙いとした実証実験などをすべきだ」と記した。同党金融調査会も5月、政府・日銀一体で具体的な検討を直ちに始めるよう提言した。政府は月内に決める経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)への反映を検討する。

念頭にあるのは中国の存在だ。中国がデジタル通貨技術の国際標準化で主導権を握れば「安全保障上の脅威になる」(自民党幹部)。

米ドルは基軸通貨として世界の貿易や金融取引の中心的な地位を占める。ドル優位が低下すればイランや北朝鮮への経済制裁などの外交手段に使ってきた米政府の国際的な影響力も落ちる。「ドル1強」を崩すため中国がCBDCの技術開発を加速する狙いはその点にあるとの見方は多い。

金融インフラが脆弱なアジアやアフリカなどの新興国では、中国の経済圏構想「一帯一路」を突破口に元が普及する恐れがある。麻生太郎財務相も「国際決済に使われることを頭に入れておかないといけない」と警戒感をあらわにする。

慎重だった米国も米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が6月に「真剣に研究する」と述べた。日米は財務当局間で協議してきた経緯があり、政府・自民は日銀も巻き込んで米国との協調を探る構えだ。

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