ネット授業、体制整わず 「対応バラバラ」教員困惑

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、3月から休校が続いていた都内の学校の多くが再開した。休校中はオンライン教育が広がり、授業動画の配信などに各校が取り組んだ。各校の方針や教員の対応能力には差があり、再拡大に備えたサポート体制の構築が急務だ。
「私はチョコレートが好きです。みなさんは何が好きですか」。画面に映るクラスメートを見ながら、自己紹介する。福生市立福生第六小学校は、5月からビデオ会議サービス「Zoom」を使った取り組みを始めた。
休校中に迎えた新学期。クラスの初顔合わせは画面越しとなった。児童の9割程度が参加し、榎並隆博校長は「全面再開後も、オンラインでの参加を要望する家庭もある。教員がお互いアドバイスするなどスキルが高まった」と自信を見せた。
都立校は6月29日から全面再開した。ただ、都内の新規感染者数は増加傾向にあり、2日には2カ月ぶりの水準となる107人の感染を確認。都は感染が再拡大した場合、全面休校せず分散登校などの対応に逆戻りする方針を示している。
「新常態」で学びの主役になるとみられたオンライン教育だが、課題も浮かび上がった。教員のノウハウ不足だ。
「年配の教員は戸惑い、若い教員に負担が集中した」。都内の小学校の管理職は、今後について不安を口にする。「児童も長時間のオンライン授業を受け入れる体制ができていない。授業の代わりになるとは思えない」
経済協力開発機構(OECD)の2018年の調査では、課題や学級活動で、情報通信技術(ICT)を活用している日本の中学教員の割合は17.9%。比較的進んでいるとされる都でも、経験不足は明らかだった。
オンライン教育を支える通信インフラの自治体間、学校間の格差も浮き彫りに。23区内のある中学校教員は「区内でも対応がバラバラ。一度も参加しなかった生徒もいる。学力に差が出るのでは」と懸念する。
日本経済新聞が6月、東京23区などの教育委員会に実施したアンケートによると、23区の小中学校で同時双方向のオンライン学習を実施したのは4区にとどまった。
お茶の水女子大の大多和直樹准教授(教育社会学)は「オンラインで代替できることとできないことを整理しなくてはならない」と指摘。「生徒、教員ともにオンライン授業には得手不得手があり、一方的に押しつけては教員が現場に責任を持てない。行政は現場と課題や意識を共有すべきだ」と話した。

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