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美術館でじっくり鑑賞、やっと コロナで予約制広がる

文化の風

京都市京セラ美術館は入り口で予約を照会する(京都市左京区)

展覧会を予約制にすることで入場者数を制限する美術館が相次いでいる。新型コロナ対策の一環として館内の混雑を緩和するだけでなく、余裕のある空間で入場者にじっくり作品を鑑賞してもらう狙いだ。日本の美術館においては、話題の展覧会で入場前の長蛇の列や作品前での大混雑が当たり前の光景となって久しい。コロナを機に美術館が長年の課題を解決しようと本腰を上げた。

入場に上限設定

京都市京セラ美術館は5月に展覧会の予約を始めた。同館のサイトか電話で予約し、入り口で予約を照会。検温や手指消毒を経て入場できる。入場者数は展覧会ごとに30分で75人に制限する。この数に達していない場合に限り、7日からは当日その場で予約を入れることで即座に入場できるようになる。

同館は当面、すべての展覧会で事前予約を継続する方針だ。川口伸太郎副館長は「コロナをきっかけに新しい美術館のありようが求められている。美術館を過度に人が集中せず、距離を保ちながらじっくり楽しんでもらえる場にしたい」と話す。

兵庫県の西宮市大谷記念美術館は6月に終了した「メスキータ展」で予約制を導入、1時間あたりの入場者を100人に制限した。10月に始まる「今竹七郎展」も同様の予約制を導入する方針。兵庫県立美術館(神戸市)も6月に終了した「超・名品展」に続き、3日からの「ミナペルホネン/皆川明 つづく」展でも予約制を採った。入場者はコンビニの端末などで日時指定券を予約する。

現状では各館ともネットで発券までは完了できず、美術館の窓口などで予約の確認や決済をする必要がある。京セラ美術館は今秋にもネット上で発券、決済できるオンラインチケットサービスを導入する。「昨年から検討していた。人気の展覧会で名物と化している長蛇の列を解消したい」(同館)という。

チケットの予約やネット決済は仏ルーブル美術館など欧米の主要館では一般的なシステムだ。しかし日本では上野の森美術館(東京)が2018年に開いた「フェルメール展」で日時指定券を販売した程度で、事例は極めて限られている。ネットでのチケット購入も昨年開館した福田美術館(京都市)など対応できる美術館はまだ少ない。

せっかくの展覧会が大混雑のせいで目当ての作品をじっくり鑑賞できない、という批判や嘆きの声は以前からいくらでもあった。「100万人規模の来場者の展覧会は過去、人混みの酸欠で倒れる人が出たこともある」(大谷美の越智裕二郎館長)という。新型コロナの3密対策が長年の問題を解決する後押しとなっている。

収入減が課題

とはいえ予約制が美術館のスタンダードとなるには経営面での課題が残る。入場者数を制限すれば収入が減る。懐事情の厳しい多くの美術館にとっては痛手となる。「美術館が自治体から一定の助成を得る際、入場者数などでノルマを課される場合もある。人口の1割程度が入場者数の目安とされる公立美術館もある。大きな動員が見込める展覧会がこれまで以上に必要になってくる」と大谷美の越智館長は言う。

大阪市立大学の吉田隆之准教授は「当面は入場者数の減少は避けられない。美術館の収支構造を見直せば、美術館が本来どういう役割を果たすところなのかがはっきりするはずだ。コロナ後の美術館のあり方を真剣に議論する時が来ている」と指摘する。美術鑑賞の機会を広く担保し、美術館の経営とどう両立させるか。古くて新しい問題が突きつけられている。(山本紗世)

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