メキシコ、殺人事件過去最悪ペース 要人襲撃相次ぐ
【メキシコシティ=宮本英威】メキシコの治安情勢の悪化は投資にとっての懸念材料だ。2020年の殺人事件の発生件数は、過去最悪だった19年を上回るペースで推移している。麻薬組織によるとみられる要人への襲撃も相次ぐ。日本企業が多く進出する地域でも事件は急増しており、警戒感が高まっている。

6月26日早朝、首都メキシコシティの高級住宅地で、同市治安庁のオマル・ガルシア長官が乗った車が襲撃された。同氏は助かったが、警備員ら計3人が亡くなった。

6月中旬には中西部コリマ州で連邦裁判所のウリエル・ビジェガス判事が妻と共に射殺された。いずれも麻薬組織ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン(CJNG)の犯行とみられる。同国では組織間抗争や市民の巻き添えは少なくないが、要人襲撃が相次ぐのは異例だ。
同国政府によると、2019年の殺人事件の発生件数は2万9421件と過去最高を更新した。20年1~5月も1万2184件と、19年を上回るペースで推移している。
特にマツダやホンダなど日本企業が進出する中部グアナフアト州の19年の殺人事件数は2775件と全国最多で、15年比で3倍以上に増えた。
在メキシコ米商工会議所の経済顧問のルイス・フォンセラダ氏はフォーブス誌の取材に「部品の盗難、従業員の安全問題はコスト面でも簡単には取り戻せない」と、投資への懸念を示している。