11月にミャンマー総選挙 スー・チー氏与党退潮か
国軍に強く出られず、少数民族の支持低下

2020/7/2 18:00
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【ヤンゴン=新田裕一】任期満了に伴うミャンマー総選挙の投票日が11月8日に決まった。5年前の前回総選挙で改選議席の8割を獲得した民主化指導者アウン・サン・スー・チー氏の与党、国民民主連盟(NLD)には退潮の兆しがある。上下両院計で過半数を維持できる改選議席の3分の2の確保が目標となる。

都市部でのスー・チー氏への支持は圧倒的だが少数民族地域では反発も(6月、ヤンゴンでスー・チー氏の誕生日を祝賀する垂れ幕)

総選挙は連邦議会上院(定数224)、同下院(同440)などが対象になる。上下両院はいずれも事前に議席の25%が軍人に割り振られ、改選するのは上院168、下院330の計498議席だ。軍人議席を含め上下両院で過半数(333議席)を占めるには改選議席の3分の2の獲得が必要。上下両院選はそれぞれ小選挙区制で、1選挙区の当選者は1人だ。

長い軍政の後、本格的な民政移管を実現したスー・チー氏の人気はなお高い。配偶者が外国籍のため憲法の規定で国家元首の大統領にはなれないが、国家顧問兼外相の肩書で事実上の政権トップとして振る舞っている。

台湾とミャンマーの研究機関が2019年9~10月に合同で実施した世論調査によると、次の総選挙での投票先としてNLDを選んだ有権者は31%だった。国軍系の最大野党、連邦団結発展党(USDP)の8%、少数民族系のその他政党の3%を大幅に上回った。

それでもNLDは安泰でない。全体の59%は無回答だった。スー・チー氏は影響力の大きな国軍に強い態度を示せず、国際社会が関心を持つイスラム系少数民族ロヒンギャへの迫害問題を解決できていない。外国投資の受け入れ額は回復が遅れている。新型コロナウイルスの影響もあり、世界銀行は20年の実質成長率を0.5%と予想する。

NLDの不安材料は国民の3割を占める少数民族の「スー・チー氏離れ」だ。国土の周辺部に多く住むシャン、カレンといった少数民族は自治権拡大などを求めて国軍と武力衝突を繰り返してきた。5年前のNLD大勝で期待した国軍との対立解消は遠く、失望感が漂う。

懸念したスー・チー氏は年初から3月にかけ、少数民族の多い地方都市を10カ所以上巡り、集会を開いたが、効果は不透明だ。

少数民族はいくつかの新党を立ち上げ、総選挙でNLDから議席を奪う構えだ。東部が基盤の少数民族政党、シャン民族民主連盟(SNLD)の幹部は6月、地元メディアのインタビューで「(NLDと)対等な関係を構築するのが我々の目標だ」と主張した。

総選挙はNLDに複数の少数民族政党とUSDPが挑む構図になる。5300万人の人口の7割を占めるビルマ族出身のスー・チー氏は、独立運動の指導者を父に持ち、なおカリスマ的な人気を持つ。軍人やその関係者を除けば、ビルマ族の多くがNLDに投票する可能性は高い。

ミャンマーの大統領は上下両院を合わせた第1党から選ばれる。NLDが最大勢力を維持するのは確実だ。だが、仮に少数民族の離反や景気悪化で議席を大きく減らす事態になれば、NLD政権の求心力が低下し、経済改革や投資環境の改善を遅らせかねない。

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