自粛警察を生む「正義感」 行政の発信に工夫を
太田肇・同志社大教授

2020/7/1 18:40
保存
共有
印刷
その他

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言発令中には、営業する店に貼り紙をしたり、県外ナンバーの車を傷つけたりする「自粛警察」と呼ばれる行為が目立った。個人と社会の関係などを研究する同志社大の太田肇教授は「行政が外出自粛などを要請する際には、他人への攻撃は許されないという発信にも力を入れるべきだ」と話す。

同志社大政策学部の太田肇教授

同志社大政策学部の太田肇教授

自粛警察は緊急事態宣言が発令された4月ごろから激しさを増した。同月中旬には都内の飲食店に「営業するな!火付けるぞ!」と書いた段ボールが貼られる事件も起きた。5月に威力業務妨害の疑いで警視庁に逮捕された男は「感染者が増えていた恐怖から、間違った正義感を持ってやってしまった」と供述した。

太田教授によると、当時、SNS(交流サイト)上の投稿の一部には、不自由な暮らしを我慢して自粛することこそが正しいという風潮が垣間見えた。「SNSなどで形成された『正義』を後ろ盾に、自粛要請に応じていないように見えた店や個人が鬱憤のはけ口にされた」

行き過ぎた事例が知られるようになると、インターネット上では自粛警察に対する批判も広がり、攻撃は下火になった。ただ「再び感染が拡大して事態が緊迫すれば、再燃する可能性がある」と太田教授は話す。

その場合、攻撃は感染の「第1波」で標的とされた一般市民や店舗ではなく、芸能人や公務員、著名企業社員などへ向く恐れがあるという。「知名度が高いこうした人たちは『たたいても構わない』と錯覚されやすい。自粛を巡る同調圧力や不公平感という根本的な要因に目を向ける必要がある」

他人に対して怒りを感じても攻撃する前に冷静になる、といった個人の心がけに加えて「行政の発信方法も工夫する必要がある」。都道府県による外出自粛や営業休止の要請に強制力はないが「絶対的なルールのように捉えられたことが私的な制裁につながった」とみるためだ。

今後、政府や都道府県が感染対策として行動の自粛を要請する際の注意点として「あくまでも要請であり個々の判断は尊重されること、要請に応じていないように見えたとしても他人への攻撃は許されないことを併せて呼びかけるべきだ」と太田教授は求めている。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]