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国産スパコン「富岳」が世界一、使いやすさアピール

理化学研究所と富士通が開発したスーパーコンピューター「富岳」が、計算速度などを競う世界ランキングで「4冠」を獲得した。使いやすさを探求した富岳は、海外勢が開発を急ぐ次世代スパコンに先駆けて稼働し、計算速度では2位を大きく引き離した。新型コロナウイルス感染症の研究でもいち早く成果を出すなど実績を上げつつある。

スパコンは生き物の頭脳にも例えられるCPU(中央演算処理装置)やGPU(画像処理半導体)を大量に使って計算能力を大幅に高めた計算機だ。複数の要素を同時に扱う計算が得意で、現実世界で行うことが難しい実験などをシミュレーション(数値計算)で求める。1秒間あたりの計算回数が多いほど、得られた答えの精度は高くなる。米国や中国を筆頭に世界で開発競争を繰り広げている。

富岳は、高速コンピューターに関する国際専門家会議が発表したランキングの最新版で、(1)1秒間の計算速度(2)実際に分析に使うソフトに近い計算の速度(3)ビッグデータの処理速度(4)人工知能(AI)にデータを学習させる速度――の4部門で世界一になった。計算速度は毎秒41.5京回(京は1兆の1万倍)で、2位の米IBMなどが開発した「Summit(サミット)」に2倍以上の差をつけた。

国産のスパコンが首位を獲得するのは「京(けい)」以来、8年半ぶり。京が記録した1秒間の計算回数は8162兆回で、2位の中国製スパコンの3倍以上の速度になる。世界一になった日本のスパコンは6機目だ。日本のハードウエア技術の高さを改めて証明したが、京では課題もあった。使い勝手が悪かったことだ。

京では開発を担った富士通製CPUの基本設計を活用したため、利用できる基本ソフト(OS)が限られていた。そのため利用者が京を使う場合には、基本ソフトを自ら変換したり新たに開発したりする手間がかかった。国費を投入して開発するスパコンにはユーザーが使いやすい設計が求められていた。

富士通社長の時田隆仁さんは「富岳では使いやすさにこだわって開発に取り組んできた」と話す。CPUの基本設計を見直し、スマートフォン用CPUなどとして広く普及する英アーム・ホールディングスの基本設計を活用した。OSも企業で広く使われる米社製のリナックスを採用して互換性を高めた。

世界の企業や研究者がつくった多くのソフトが手間をかけることなく、使えるようになった。すでに理研や京都工芸繊維大などの研究グループは、新型コロナウイルスの研究で、会話やくしゃみなどで飛沫がどのように飛散するか富岳でシミュレーションした。新型コロナによる感染の拡大防止に一役買いそうだ。

スパコンは医療分野や防災分野で利用が広がる。医療分野では数百億通りにもなるたんぱく質や化合物の組み合わせをスパコンで探索し、新薬候補が早く見つけられる。防災分野では津波の動きや地球規模の気候変動など多くの要素が絡み合う現象を計算し、被害の予測につなげる。

様々な数値計算ができるスパコンは、産業競争力や安全保障にもかかわる。世界では米国や中国が「エクサ(エクサは100京)級」のスパコンの開発に注力している。米国は21年にエクサ級の「オーロラ」を稼働させる。中国でも20年末以降に、同規模のスパコンを稼働させるとみられる。

今回のランキングで富岳が1位を獲得できたのは米中のスパコン開発の端境期にいち早く投入できたためだが、計算速度で米中の勢力に再逆転されるのは時間の問題だ。理研計算科学研究センターの佐藤三久さんは「計算速度の結果だけではなく、実際のソフトでの性能が重要だ」と使い勝手をアピールする。

富岳は今回から加わったAI関連処理の性能を競うランキングでも1位を獲得した。世界でAI分野の成果に期待が高まる。「使いにくい」の批判をバネに、国産スパコンがトップに躍り出た。(矢野摂士)

 ドイツ・マンハイム大学などの研究者らが作成し、計算速度などの順位を毎年6月と11月に発表する。計算速度を競う「TOP500」は1993年6月に始まった。当初は日本と米国が争っていたが、2010年代に入り中国が台頭。13~17年の5年間は中国が首位を走った。
 05年からは純粋な計算速度に加え、1ワットあたりの計算回数を競う「Green500」が登場した。13年以降は東京工業大学や理化学研究所などの国内勢がトップを争う。20年6月はスタートアップのプリファード・ネットワークス(東京・千代田)が首位に立った。

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