日本ミシュラン社長「スマートシティーはパンクなし」

BP速報
2020/7/1 13:40
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ミシュランが2024年の量産を目指すエアレスタイヤの試作品「Uptis Prototype」(撮影:日経クロステック)

ミシュランが2024年の量産を目指すエアレスタイヤの試作品「Uptis Prototype」(撮影:日経クロステック)

日経クロステック

新型コロナウイルスが世界で猛威を振るい、自動車産業は大打撃を受けている。新車需要の蒸発も懸念される中、比較的安定して収益を上げられるのがタイヤ業界だ。交換タイヤの供給数は新車タイヤの3~4倍にのぼり、昨今のような経済危機でも需要は底堅い。ただ、新型コロナ収束後「アフターコロナ」の世界は未知数の部分も多い。タイヤ業界2強の一角、フランスのミシュラン。その日本法人である日本ミシュランタイヤ社長のポール・ペリニオ氏に展望を聞いた。

――新型コロナの影響はどこまで続くか。

日本ミシュランタイヤ社長のポール・ペリニオ氏(出所:日本ミシュランタイヤ)

日本ミシュランタイヤ社長のポール・ペリニオ氏(出所:日本ミシュランタイヤ)

「感染症の拡大や収束を見通すのは非常に難しい。ただ、現状から分析することは可能だ。薬やワクチンの開発にも依存するが、ひとまず秋までは影響が続き、経済的な負のインパクトを世界に与えるはずだ」

「さらに、感染症の『第2波』の懸念は残る。しばらくはストップ・アンド・ゴーのような状態が続く可能性が高い」

「中国を発端とする今回の新型コロナは、その後、東南アジアや欧州、北米に広がった。そして、現在は南米にシフトしている。ただ、深刻なニュースが多い中でポジティブな点もある。2020年6月時点、多くの国で経済活動が回復基調にあることだ」

――アフターコロナにおける移動の概念はどう変わるか。

「新型コロナによって、世界中で人や物の動きが制限された。例えば日本では、5月の大型連休期間に、モビリティーによる移動が前年比で半減した。政府の出した自粛要請に従う形で、日本国民は正しい行動を選んだ」

「人は社会性に富んだ動物で、本質的には『動きたい』と強く思っている。『ワーク・アット・ホーム(在宅勤務)』や『ステイ・アット・ホーム(自宅退避)』が続いたとしても、人に会いたい気持ちは抑えられず、そのために行動に移す。新型コロナ禍でもこの本質は変わらない」

「ミシュランとして考えるのは、人は移動(モビリティー)の体験を欲しているということだ。新型コロナは移動の概念までは変えない。むしろ、今までの延長線上でモビリティーへのニーズが高まっていく。満員電車に対する抵抗が大きくなり、自家用車を使いたいという気持ちが高まる。そして、より感染リスクを減らせる自転車や2輪車の需要が拡大する」

――アフターコロナでもう1つ聞きたい。街づくりとしての「スマートシティー」にミシュランはどう取り組むのか。

「次世代都市のコンセプトであるスマートシティーには、ミシュランも強い興味を持っている。まずはタイヤを中心に、どのようにスマートシティーの構築に貢献できるのかを考えたい」

「実現に向けてさまざまな業界関係者と意見交換を進めている。ミシュラン独自のスマートシティー構想は示していないが、いくつかのプロジェクトに参画している。物とサービスをどう組み合わせてスマートシティーに適用するか、知見を集めて今後の戦略を練る」

「スマートシティー内では新しいモビリティーが活躍するだろう。例えば、シティー内を走行できるのは電気自動車(EV)をはじめとする電動車になるはず。そして、自動運転技術も当然のように搭載が進んでいく。これら車両の進化に合わせて、タイヤに必要とされる性能も変化する」

「EV走行時の電力消費量を減らすため、転がり抵抗値の低いタイヤ需要はさらに大きくなる。また、ライフサイクルで二酸化炭素排出量を評価する『ライフサイクルアセスメント(LCA)』で環境負荷を比較検討しなくてはならず、材料や生産プロセスの改革が不可欠となる。スマートシティーに適合するように、二酸化炭素の削減にあらゆる面で努めていく」

「あとは、自動運転のバスやトラックにとって、走行中のパンクは大敵になる。無人で人や物を運ぶ車両の場合、パンクしたタイヤを交換することが困難だからだ。この課題解決のために有効なのは、パンクがないエアレスタイヤだ。2024年の量産を目指して開発を進めている。さらに、コネクテッド技術を使い、車両とタイヤ、道路を連携させることも視野に入れる」

「今後の世界で躍進するためには、提携・協業など、関連企業とのパートナーシップを重視する必要がある。1社単独で成功できる時代は終わった。自動車メーカーやスマートシティー事業者とのつながりを、さらに深めなくてはならない」

「さらに、ミシュランはオープンイノベーションを推進する。大学や企業と共同でイノベーションの創出を狙う。必要なのは、新しい場所で新しい人に多く出会うことだ。そのための仕組みづくりには特に力を入れる」

ポール・ペリニオ
1971年生まれ。93年、フランスビジネススクール卒業。94年、フランスレンヌ第一大学日仏経営大学院ディプロマ取得。95年、日本ミシュランタイヤのトラック・バスマーケティング部に配属。その後、英国法人やフランス本社などでマネージャーを歴任し、08年に日本ミシュランタイヤPCLT事業部コマーシャルディレクターに就任。12年、ベネルクスミシュラン代表取締役社長。15年から日本ミシュランタイヤ代表取締役社長

(聞き手は日経クロステック 窪野薫)

[日経クロステック 2020年6月30日掲載]

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