プリウスに急加速を防ぐ機能 トヨタ、高齢者も安全に

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2020/7/1 13:30
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トヨタ自動車は1日、ペダルの踏み間違いによる急加速を防ぐ機能を備えたハイブリッド車「プリウス」を発売した。前方に駐車場の壁などの障害物がない場合も、アクセルとブレーキの踏み間違いを検知して加速を緩やかにする。高齢ドライバーの関わる交通事故の割合が上昇する中、安全に配慮した技術を普及させる。

踏み間違いを検知し加速を抑える「急アクセル時加速抑制機能」をプリウスに導入した。過去の車両走行のビッグデータ分析をもとに判断する。機能を使いたいという利用者向けに用意する専用のスマートキーで解錠する場合にのみ作動するようにした。

夜間に歩行者の検知をサポートする機能や、震災時にスマートフォン充電などに使える外部給電機能を標準搭載した。価格は約260万円からに設定した。「急アクセル時加速抑制機能」の後付け装置を3万8500円で同時に発売した。対象は2015年以降に生産したプリウスで、機能を追加できるようにした。

「急アクセル時加速抑制機能」の仕組みはこうだ。車載通信機(DCM)を搭載した十数万台のトヨタ車の走行データを集めて、事故発生時の状況を分析する。アクセルの踏み込み具合のスピードや、アクセルを踏む前のウインカー操作の有無、走行している道路の勾配などを総合的に判断して、運転者が踏み間違えたかどうかを判定する。

同機能が不必要に作動して、混乱した運転者が連続でアクセルを踏んだ場合には、時速約30キロメートルまで加速する仕組みを取り入れた。運転者がゆっくりアクセルを踏み直せば通常運転に戻る。同機能の開発を担当した岸本雄飛グループ長は「万が一に備えたシステムにした」と話す。

警察庁交通局によると19年の交通事故による死亡者は3215人と統計の残る1948年以来で最も少ない。最多だった1970年の死者数は1万6765人と、日清戦争2年間の死者数(1万7282人)に迫るもので「交通戦争」とも呼ばれた。シートベルト装着率向上やエアバッグの標準装備化で死亡者が減ったとされる。

一方で少子高齢化が進み、日本では高齢者による悲惨な交通事故に社会的な関心が高まっている。75歳以上の運転者による死亡事故件数は16年に459件と、06年(423件)比で1割増えた。死亡事故全体に占める割合も16年に13.5%と、06年(7.4%)から6.1ポイント上昇している。視力低下や反射神経が鈍くなること、交通環境を客観的に把握することが難しくなることが原因と分析されている。

プリウスの開発を担当した田中義和チーフエンジニアは「比較的年齢の高い利用者が多いプリウスから導入して、少しでも早く安全と安心を広げたい」としており、他の車種にも広げる考えだ。さらに「安全は競争領域でなく、協調領域だ」(田中CE)として、同機能の基本的なシステムを、日本自動車工業会(東京・港)を通して他社とも共有する考えだ。

トヨタは12年に、前進や後退時の障害物をセンサーで検知することで、駐車場事故などを防ぐ「インテリジェントクリアランスソナー(ICS)」を発売。18年からはプリウスやアクアなどの車種を対象に、ソナーで壁などを検知することで踏み間違い事故を防ぐ後付け装置を販売している。

トヨタは1997年に、世界初の量産ハイブリッド車(HV)としてプリウスを発売した。2010年には世界で約50万台を販売したが、19年には約17万台にまで減っていた。高齢ドライバーが増えるなか、安全機能の拡充がプリウス販売増につながる可能性もある。

(藤岡昂)

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