米、アフガン駐留軍の追加削減探る
「新ロシア疑惑」が逆風、テロの脅威なお残る

2020/7/1 7:31 (2020/7/1 8:24更新)
保存
共有
印刷
その他

米タリバンの和平合意は履行が伴っていない可能性が指摘されている(2月29日、ドーハで握手する米国務省のハリルザド氏(左)とタリバン幹部のバラダル師)=ロイター

米タリバンの和平合意は履行が伴っていない可能性が指摘されている(2月29日、ドーハで握手する米国務省のハリルザド氏(左)とタリバン幹部のバラダル師)=ロイター

【ワシントン=中村亮】トランプ米政権がアフガニスタン駐留米軍の追加削減を探っている。11月の大統領選で「米国第一」を支持者に訴える狙いだが、治安悪化で外国テロ組織の拡大を許せば米国が再びテロの標的になる恐れがある。ロシアが米兵殺害に向けた工作活動をした疑惑も米軍撤収の足かせになる。

米国務省は6月30日、ポンペオ国務長官とアフガンの反政府武装勢力タリバンの幹部が29日にテレビ会議を開いたと明らかにした。ポンペオ氏はアフガン政府軍に対する攻撃を減らし、同国政府との捕虜交換を早期に完了するよう求めたとみられる。米政権はこの2つが実現すればアフガンの将来の統治体制などを決める同国政府とタリバンの直接対話を開く条件が整うとみている。

国務省のアフガン和平担当特別代表のザルメイ・ハリルザド氏も28日、タリバンが事務所を置くカタールや、タリバンに影響力を持つとされるパキスタンに向けて出発した。アフガン政府ともテレビ会議を開いているとされ、アフガン和平に向けた仲介外交を加速させている。

米政権がアフガン和平の進展を急ぐのは米軍の追加削減を進めたいからだ。2月末に米国とタリバンが署名した和平合意は米軍撤収を2段階で進めるとした。まず7月中旬までに駐留規模を1万2000人程度から8600人に減らす。米軍は6月中旬までにこの第1段階の削減を終えた。次の段階である2021年4月までの完全撤収に向け、追加削減に直ちに着手するのかが焦点だ。

CNNテレビによると、政権内では駐留規模を秋までに8600人から4500人に減らす案が浮上している。政権の内情を知る関係者はエスパー国防長官がこの案を承認し、実行に向けて調整が進んでいると話す。同案が実行されれば米軍はアフガン政府軍の訓練をほぼ終了し、過激派組織「イスラム国」(IS)や外国テロ組織「アルカイダ」の掃討に注力するとみられる。

国防総省でアフガン政策を担当したジェイソン・キャンベル氏は大幅な追加削減は米国が和平合意を一方的に履行することになると警鐘を鳴らす。タリバンは和平合意でアフガンでの外国テロ組織の活動を認めないと約束した。だが国連は5月末の報告書でタリバンに関し「アルカイダと連携している」と指摘。米国との交渉プロセスでも定期的に相談していたといい、タリバンの合意履行は危うい。

01年9月に起きた米同時テロはタリバンの後ろ盾を得たアルカイダが実行した。米議会などでは早計な米軍撤収はアフガンでの外国テロ組織の復活や拡大を許し、米国が再び攻撃の標的になるとの懸念が強い。

ロシアによる米兵殺害工作の疑惑も撤収に影を落とす。ロシアはタリバンとつながる戦闘員に対し、米兵を殺害すれば報奨金を提供すると持ちかけた疑いがある。米メディアによると米政権は19年初めにこの情報をつかみ、トランプ氏にも書面で報告したが対抗措置は取らなかった。治安悪化につながるロシアの介入が判明すればタリバンとの和平交渉が難しくなるとみて、工作活動を放置した可能性がある。

ロシアの新疑惑に議会は猛反発している。野党・民主党指導部のステニー・ホイヤー下院議員は30日、政権から疑惑に関する説明を受けた後に記者団に対し「ここにいる全ての人はロシアが今もアフガンにマイナスなことをしていると思うだろう」と指摘。アフガン情勢の安定は見通せないとの認識を示した。与野党双方からロシアに制裁を科すべきだとの声も高まっている。

オバマ前政権でアフガン和平を担当したジャレット・ブラン氏は疑惑に関して米軍撤収に反対する勢力が情報漏洩した可能性があると指摘した。一方で「ロシアの動機が不明確だ」と述べ、さらに精査する必要があるとみる。タリバンは01年から米国と戦争下にあり報奨金を得なくても米軍が標的だった。和平交渉中に戦闘が激しくなればロシアが望む米軍撤収が遅れる可能性もある。

トランプ氏は11月の大統領選に向けてアフガン撤収に強い意欲を見せてきた。ボルトン前大統領補佐官の回想録によると、トランプ氏はタリバンとの和平合意をめぐり「米軍を20年10月にゼロにすると盛り込むべきだ」と周辺に指示したことがあった。大統領選直前に19年間に及ぶアフガン戦争を事実上終わらせて、世論の関心を集める思惑があったのは明らかだ。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]