日米欧、対中国制裁巡り温度差 香港国家安全法が施行

米中衝突
習政権
2020/6/30 21:30 (2020/6/30 21:58更新)
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「香港国家安全維持法」を可決した中国の全人代常務委員会会議(30日、北京の人民大会堂)=新華社・共同

「香港国家安全維持法」を可決した中国の全人代常務委員会会議(30日、北京の人民大会堂)=新華社・共同

香港の自由や民主主義を揺るがす「香港国家安全維持法」が30日成立したのを受け、日米欧などからは中国への反発が強まっている。追加制裁に踏み切る方針のトランプ米政権と、制裁には距離を置く日欧とでは温度差も大きい。中国の強権手法の拡大に対抗できるか、日米欧の結束が問われている。

日本政府は30日、中国が国家安全法案を可決したことに「遺憾」を表明した。これまでの「憂慮」から「表現を一段強めた」(外務省幹部)。

茂木敏充外相は「国際社会は一国二制度の原則に対する信頼に基づき香港との関係を構築してきており、それが香港の繁栄につながってきた。法律の制定はこのような信頼を損ねるものだ」との談話を発表。河野太郎防衛相は習近平(シー・ジンピン)国家主席の国賓来日に「非常に重大な影響を及ぼす」とした。

日米欧で最も強硬姿勢をみせるのが米国だ。ポンペオ国務長官は29日の声明で香港への優遇措置の一部を見直すと表明。「香港の置かれた現実を反映する追加的な措置をとる」とも強調した。

米国が29日決めたのは香港へ軍民両用技術を輸出する際の優遇措置の撤回だ。今後は中国本土への輸出と同様の制限を課す。香港の自治の侵害に関与した中国共産党員へのビザ(査証)規制もすでに打ち出している。

いずれも効果はそれほど大きくない。輸出規制の対象は2018年の米国の香港への輸出の1.2%。ビザ規制も象徴的な意味合いが強い。強力な制裁は温存している。

米国の追加制裁の選択肢の中で最も香港にとって影響が大きいのが、香港ドルと米ドルの自由な交換の制限だ。香港ドルは値動きが米ドルに連動する「ペッグ制」を採用している。仮に米国が制限に踏み切れば、香港経済への影響は計り知れない。同時に香港に進出する米国の金融機関も被害を受けることになる。

金融分野では、米国の株式市場に上場する中国企業への投資を制限する法案や、香港の自治の侵害に関わった人物と取引関係のある海外の金融機関にも制裁を科す法案なども米議会で審議中だ。中国企業の資本調達や香港に進出する外資系企業の運営に幅広く影響する可能性を秘める。

発動には上下両院で可決したうえで大統領の署名が必要だ。トランプ大統領は大統領選に向けて重視する米中貿易合意への影響もにらみつつ対応を吟味することになる。

香港の旧宗主国である英国のジョンソン首相は30日の記者会見で国家安全法の成立を「深く懸念している」と表明した。香港住民の最大285万人を対象に英国での市民権取得を促進する中国への対抗措置を進めるか、近く判断する考えだ。

欧州連合(EU)のミシェル大統領は30日の記者会見で、国家安全法が香港の高度な自治を「著しく損なう」と主張したうえで「この決定を非難する」と表明した。米国とは異なり、日本やEUは経済制裁などは現時点では検討しておらず、対中姿勢を巡る足並みはそろっていない。

台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は30日、「中国には失望した」と述べた。台北市内で現地メディアの取材に応じた。7月1日には香港からの移民や投資の受け入れを担う事務所を開設する予定で、蔡氏は「全力で香港を支持する」と強調。台湾では昨年から「香港の二の舞いになりかねない」との危機感が強まっており、今回の法案可決は反中志向を一段と刺激しそうだ。

日米欧など主要7カ国(G7)は17日、外相の共同声明で国家安全法の制定を「再考」するよう求めていた。しかし中国政府は「純粋に中国の内政」と反発し、制定を強行した。香港と同じく「核心的利益」と位置づける台湾や南シナ海を巡っても強硬姿勢を強める中国とどう対峙するのか。日米欧には手詰まり感も広がっている。

(ワシントン=永沢毅、ブリュッセル=竹内康雄、ロンドン=中島裕介、台北=伊原健作)

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