LRT効果、栃木で首位交代 北関東の20年路線価

2020/7/1 11:00
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関東信越国税局は1日、相続税や贈与税の算定基準となる2020年分の路線価(1月1日時点)を発表した。栃木県では記録の残る1989年以降で初めて最高路線価地点が交代し、次世代型路面電車(LRT)や大型複合施設の整備が進むJR宇都宮駅東側の地点が駅西側の中心市街地に代わって首位に立った。茨城、群馬の両県でも地価上昇は駅前再開発の進む地域に集中した。

複合施設の整備が進むJR宇都宮駅東側の地点が栃木の最高路線価で初めて首位に立った

複合施設の整備が進むJR宇都宮駅東側の地点が栃木の最高路線価で初めて首位に立った

栃木で最高路線価1位となったのは、駅東口駅前ロータリー(宇都宮市宮みらい)。22年3月の開業を目指すLRTの整備に加え、コンベンション施設や商業施設、ホテルなどの複合施設の建設も始まり、「沿線や駅周辺で不動産取引が活発化している」(不動産鑑定士の鈴木健司氏)。路線価は1平方メートル当たり29万円で、上昇率は13.7%と3県最大となった。

一方、19年まで首位だった駅西側の中心市街地の地点(宇都宮市馬場通り2丁目)は横ばいの28万円で逆転を許す形となった。同年5月に商業施設の「宇都宮パルコ」が撤退し、「客足の流れが変化するなどして、土地需要も鈍った」(同)。関東信越国税局によると、県内8税務署の最高路線価で上昇地点が出るのも、21年ぶりという。

茨城でも開発が進む鉄道沿線の地価上昇が目立つ。最高路線価で県内トップだったつくばエクスプレス(TX)のつくば駅前(つくば市吾妻1丁目)は3年連続、3位の守谷駅前(守谷市中央1丁目)は4年連続の上昇となった。

つくば駅前について、不動産鑑定士の外山茂樹氏は「マンションや戸建てが次々に建って人口が増えている。住居用マンションが建つ土地が高値で取引されたと聞いている」と話す。

好調なTX沿線に対し、県庁所在地の水戸市は苦戦が続く。路線価2位のJR水戸駅北口ロータリー(水戸市宮町1丁目)は19年に長年の下落を脱しようやく横ばいとなったが、再び下落に転じた。外山氏は「駅前で一定の優位性はあるものの、郊外店舗に収益が流れる傾向は変わっていない」とみる。

群馬では再開発が地価上昇をけん引した。商業施設の開業やデッキ拡張が続くJR高崎駅西口(高崎市八島町)は4年連続で上昇し、最高路線価は46万円と3県で最も高かった。太田市飯田町も東武鉄道太田駅南口などで再開発が進む。一方、草津温泉の湯畑前(草津町草津)は19年の横ばいから10.2%の上昇に転じた。

不動産鑑定士の津久井伸昭氏は「国内外の来訪客が増加しており、飲食店や土産店などの売り上げが増えていた」と指摘する。

コロナの影響、顕在化に時間も

3県全体の地価動向は二極化が鮮明になっている。25税務署のうち、最高路線価が上昇したのは2019年より1つ多い6署となる一方、下落は3つ増え9署となった。上昇地点の内訳は茨城が2署(19年は3)、栃木が1署(同ゼロ)、群馬が3署(同2)だった。交通アクセスに優れた一部地域を除き、将来的な地価下落は避けられないとみられる。

今回の路線価には新型コロナウイルスの影響は反映されていない。不動産鑑定士の外山茂樹氏は不動産取引の現状について、「外出自粛の余波で不動産を見にいく人はまだ少ない。売り手も買い手も様子見をしており、足元の相場が下がっていない」と話す。

一方、不動産鑑定士の津久井伸昭氏は外出自粛で売り上げが急減した商業地の不動産価格の下落を懸念する。「商業地域では売上高が8~9割減った店舗もあり、家賃の減額交渉や撤退する店舗も増えている」という。入居者同士の接触があるマンションなどの集合住宅を避け、地方の戸建て住宅の需要が高まる可能性もあるという。

新型コロナの影響が不動産の価格や賃料に反映されるには、一定の時間がかかる。不動産価格の不透明感が強まるなか、国税局はコロナ禍によって地価が広範囲で急落した場合、路線価を減額修正して納税額を軽減する措置を検討している。

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