JDI、脱「スマホ依存」のため医療関連に照準

2020/6/30 19:53
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ジャパンディスプレイ(JDI)は30日、ヒトゲノム解析などヘルスケア関連事業に参入すると発表した。タッチパネル開発で培ったセンサー技術を生かし、液晶パネル頼みの収益構造からの脱却を目指す。2020年4~6月期の連結営業損益は70億~90億円の赤字と水面下を漂う。経営再建に向け、安定的に稼げる事業の育成が急務だ。

戦略について語るスコット会長

「JDIはディスプレーだけの会社ではない。JDIには様々な分野に応用できる技術があり、顧客価値が非常に高い」。スコット・キャロン会長は同日、オンライン会見でこう説明した。「必要なのは事業モデルの改革だ」と話す。

第1弾として打ち出したのが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて期待が高まる医療分野へのセンサー技術の活用だ。主に自動車向けで開発していた画面を触らず操作できる「タッチレス」のディスプレーを医療現場に売り込む。病院の受付機のタッチパネルなどでのに需要を見込む。

ヒトゲノム解析関連事業への参入を検討することも明らかにした。センサーで収集した利用者のデータとゲノム解析情報を掛け合わせ、リアルタイムで健康管理ができる事業などを想定している。現在はパートナー企業と詳細を詰めている状態だ。菊岡稔社長は「ヘルスケア分野は100億円の営業利益を稼げる蓋然性がある」と話した。

足元の業績は厳しい。20年3月期の連結営業損益は385億円の赤字。19年10~12月期は25億円の営業黒字に浮上したが、新型コロナウイルスの影響が顕在化した20年1~3月期は再び59億円の営業赤字に陥った。

4~6月期は70~90億円の営業赤字になる。前期比で200億円の固定費削減を実施したが、収益基盤の強化といった当面の課題は依然として残る。

新型コロナウイルスの影響は21年3月期も続く。スマートフォンや自動車向けの需要減少が続き、通期の売上高は15~20%減少する見通し。

JDIは前期、様々な経営リスクにさらされてきた。過去の工場の巨額投資による費用負担と受注減少がたたり、一時は1000億円超の債務超過に陥った。ファンドによる支援スキームが二転三転したことも混乱に拍車をかけた。それでも20年3月には独立系投資顧問会社のいちごアセットマネジメントから504億円を調達し、当面の資金繰りを確保した。

ガバナンス(企業統治)の問題も表面化した。昨年11月に不適切会計の疑いが浮上し、第三者委員会は今年4月に不正会計と認定。過年度の決算を修正した。

今年4月には外部人材も加わる「ガバナンス向上委員会」を設立し、8月に社外取締役の権限が強い「指名委員会等設置会社」へ移行することを決めている。

資金繰りとガバナンスという2つの危機対応に一通りのメドを付けた格好だが、企業として成長するためには稼ぐ力を付けなければならない。

現状では米アップルのスマートフォン「iPhone SE」向けの液晶パネルの出荷が堅調だが、スマホのパネルは将来、有機ELにシフトしていく可能性が高い。

菊岡社長は「JDIは技術立社という原点に立ち戻る」と強調した。頼みのスマホ市場で技術革新の波が本格的に起きる前に、新規事業を離陸させられるか。これがJDIの今後を左右する。

(広井洋一郎)

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