「国が行司に」「再開発見直しも」 リニア延期を聞く
リニア開業延期へ、期待と不安

2020/6/30 19:45
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リニア中央新幹線(東京・品川-名古屋)をめぐる静岡県内の工事について、6月26日に開かれた県とJR東海の初のトップ会談が物別れに終わった。リニアの開業は現計画の2027年から遅れる見通し。中部経済への影響や課題を関係者に聞いた。

■名古屋商工会議所会頭、山本亜土氏「話し合い限界、国が行司に」 
「リニアは名古屋と東京・品川を40分で結ぶ大規模事業だ。影響は中部と関東にとどまらず、その先に開業を控える関西にも及ぶ」
 「大井川の水資源問題を無視できないのはもちろんだ。工事中に水は一時的に減るかもしれないが、JR側は新たな技術を用いるなどして減少分を補うという。(トンネルを掘る前の)現段階で着手させないのはいかがなものかと思う」
山本亜土 名古屋商工会議所会頭

山本亜土 名古屋商工会議所会頭


 「(6月26日のJR東海社長と静岡県知事の)議論はかみ合っていなかった。トップ会談の後に県側が記者団に『準備工事は認められない』と述べたとされるが、これは県側に問題がある。このような意見があるのなら会談の場で話すべき。初めからダメだというのでなく、問題があれば協議して修正する形を取らなければ前に進まない」
 「リニアは国が認可したプロジェクトで(9兆円規模の総工費のうち)3兆円の財政投融資も使われる。国はこれまで以上に深く関与すべきだ。当事者同士の話し合いに限界があることが今回のトップ会談で露呈した。国が行司となって物事をさばく必要がある」
 「JR東海は6月が2027年開業にギリギリのタイミングだと言っていたが、仮に着工できても予定通りに進むかは分からない。山深い静岡工区は水が出てくるだろうし、硬い断層にぶつかる可能性もある。さまざまなリスクを考え、早く着工できるよう関係者は協力し合うべきだ」(聞き手は湯浅兼輔)
■中京大学客員教授 内田俊宏氏「名古屋の再開発、見直しも」
 「足元はコロナ禍に伴う出張自粛などで東海道新幹線の利用客が落ち込んでいる。需要の回復には3年近くかかるとみているが、2027年以降のリニア中央新幹線の開業までに往来は活発になっているだろう。JR東海も収益が出ているうちに、早期にリニア事業を軌道に乗せたいはずだ」
 「27年開業が延期になれば、中部経済全体への影響は避けられない。名古屋駅、栄地区といった名古屋の都心部や沿線各駅周辺の再開発で規模縮小、計画変更の可能性が出てくるからだ。企業は設備投資を先送りする恐れがある」
中京大学の内田俊宏客員教授

中京大学の内田俊宏客員教授


 「27年開業を前提にした経済効果は50年にわたり全国で約11兆円、このうち愛知、岐阜、三重の3県に限っても2兆円とされる。名古屋都心部の魅力を高めることで、滞在型観光の拠点ができる。訪日外国人(インバウンド)は東京や大阪が目的地となっていたが、リピーターを増やすには中部から北陸に抜ける『昇龍道』がカギになる。リニアは東西からの集客で重要な役割を担う」
 「静岡県が指摘しているように、(リニアのトンネル工事に伴う)水資源や生態系への影響が重要なのは言うまでもない。一方で、リニア開業により、静岡県内に停車する東海道新幹線の『ひかり』『こだま』が増えれば、地元住民の交通利便性が向上する効果は大きい」(聞き手は角田康祐)
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