シンガポール総選挙、与党優位揺るがず 得票率が焦点

2020/6/30 17:00
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立候補の届け出後、質問に答えるリー・シェンロン首相(6月30日)

立候補の届け出後、質問に答えるリー・シェンロン首相(6月30日)

【シンガポール=中野貴司】シンガポールの総選挙が30日告示され、7月10日の投開票に向けた選挙戦が始まった。独立以来最悪の経済危機下での選挙で、主要な争点は経済再生や雇用対策だ。政権を握り続ける与党・人民行動党(PAP)の優位は揺るがず、政権への信任を示す得票率が焦点となる。

総選挙はPAPと10程度の野党の候補者が31の選挙区で93議席を争う。有権者数は約260万人で、定数は前回2015年の総選挙から4議席増えた。前回はPAPが89議席中83議席を獲得し、圧勝した。

PAPを率いるリー・シェンロン首相は「世界は最も厳しい危機のさなかにあり、我々の力なしにはシンガポールが数十年にわたって築き上げてきたものが維持できなくなる恐れがある」と政権継続の必要性を訴える。

マニフェスト(政権公約)では10万人の雇用創出や、中高年や低所得者向けの就職支援など雇用対策を前面に押し出した。新型コロナウイルスの感染拡大後、総額1千億シンガポールドル(約7兆7千億円)近くの経済対策を実行した実績も強調する。

一方、解散前に国会で議席を持っていた唯一の野党、労働者党は消費増税の凍結や最低賃金制度の創設、定年廃止などを主張する。低賃金の外国人労働者の間で新型コロナがまん延した事態を踏まえ、外国人労働者の劣悪な住環境の改善も公約に盛り込んだ。

シンガポールは新型コロナに関する外出規制を守らなかった多くの住民に罰金を科すなど、強権的な対策を取ってきた。当初は新型コロナの抑えこみに成功したとみられたが、外国人労働者の間で感染が爆発的に拡大し、累計の感染者数は4万人を超える。

有力野党のシンガポール前進党は「野党が憲法改正を阻止できる3分の1以上の議席を確保する必要がある」(タン・チェンボク書記長)と、PAPの一党支配の是正を訴える。リー首相の弟のリー・シェンヤン氏は同党に入党しているが、自ら立候補はしなかった。

シンガポール国立大学(NUS)のジリアン・コー氏は「危機下では与党や現職が有利になる傾向があり、野党にとって厳しい戦いになる」とみる。新型コロナの感染予防のため、大規模な集会が禁止されたことも、集会を支持獲得の手段としてきた野党に不利に働く。テレビやSNS(交流サイト)を通じた選挙運動で、若い世代の支持を広げられるかがカギとなる。

15年の前回総選挙のPAPの得票率は69.9%だった。今回の得票率が7割を超えれば、リー政権のコロナ対策や経済再生への訴えがひとまず評価を得たといえそうだ。

シンガポールは1965年の独立以来、「建国の父」と呼ばれたリー・クアンユー元首相の下で高成長を遂げてきた。多くの国民は自由貿易を推進し、世界から投資や高度な人材を呼び込むPAPの政策を支持し、それがPAPが長期政権を維持する原動力となってきた。

ただ、新型コロナによって世界のヒトやモノの流れが停滞し、強みとしてきた経済モデルの継続が難しくなっている。20年の成長率はマイナス4~同7%に落ち込む見通しだ。仮にPAPが政権を維持できたとしても、経済運営のかじ取りはかつてなく厳しいものとなる。

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